用途別で比較!家計に効くガスと電気、安いのはどっち?

結論は「使い道次第」。電気は暖房で有利、ガスは給湯が得意──総務省データと機器効率で世帯別に月別試算。月数千円の差が出るケースや節約術、今すぐできるチェック項目まで具体的に紹介。

用途別で比較!家計に効くガスと電気、安いのはどっち?

ガスと電気の「前提」をそろえる—単価と効率の話

総務省「家計調査」では、二人以上世帯の光熱・水道は月平均およそ2万円前後、そのうち 電気代は約1.0〜1.3万円、ガス代は約5,000〜8,000円 が目安とされています[1]。編集部が電力量や熱量の単価を並べてみると、単純な「ガスか電気か」の優劣はつきません。なぜなら、同じ“1円”でも、暖房・給湯・調理で必要な“熱のかたち”が異なり、機器の効率や料金プランで結果が大きく変わるからです。日々の出費は生活スタイルの積み重ね。だからこそ、数字に置き換えてみることが、ため息ではなく選択の根拠になります。

まず、土俵をそろえます。電気は一般的な家庭向け単価で1kWhあたり30円前後(契約や燃料費調整で増減)[2]。都市ガスは1m³あたり150〜200円程度が目安ですが、熱量で見ると1m³はおよそ12.5kWh相当です[3]。単純換算すれば、ガスの“熱エネルギー”1kWh分の原価はだいたい13〜16円程度。ただし、機器の効率が結果を左右します。

例えば、ガス給湯器は従来型で80〜90%、高効率の「エコジョーズ」なら90%台。エアコンの暖房はヒートポンプの特性で投入電力の約2〜4倍の熱を取り出す(成績係数COPが2〜4)ため、電気の1kWhから実質2〜4kWhの“暖房熱”が得られます。調理に目を向けると、ガスコンロは鍋底に届く熱の割合が5割前後、IHは8〜9割といわれます。この効率差と単価の組み合わせが、「どっちが安い?」の答えを用途ごとに分ける理由です。

小さな例でイメージする:お湯・暖房・調理

お湯づくりから。200Lの浴槽を冬に25℃分温めるには約5.8kWhの熱が必要です。ガス給湯(実効単価18円/kWh程度と仮置き)ならおよそ100円前後。電気の抵抗式ヒーターだと30円×5.8kWhで約170円。一方、ヒートポンプ式の「エコキュート」(COP3想定)なら必要電力は約1.9kWh、電気代は60円弱、夜間の安い料金帯を使えばさらに下がります[4]。給湯はガスが強いイメージがありますが、ヒートポンプと時間帯料金の活用で電気が逆転しうる分野です。

次に暖房。10畳の部屋を8時間暖めるのに16kWh分の熱が必要だと仮定すると、エアコン(COP3)は約5.3kWhの電力=160円前後。ガスファンヒーターは実効単価18円/kWhとして約290円。ここはエアコン(電気)が有利になりがちです。最後に調理。1Lの水を沸かすのに必要な熱は約0.093kWh。IH(効率9割、単価30円/kWh)なら実費は3円前後、ガス(鍋効率5割、実効単価18円/kWh)でも3〜4円程度で、差はわずか。調理は光熱費全体に占める比率も小さいため、家計インパクトは限定的です。

結論は「使い道次第」—用途別に見た“安さ”の傾向

暖房は電気(エアコン)が有利、給湯はガス(またはエコキュートの電気)が有利、調理は差が小さい。これが大枠の整理です。ただし、住まいの断熱性能、冬の外気温、風呂の回数、家族人数、そして料金プランの選び方で結果は簡単に上下します。だから平均値に自分を当てはめるより、自宅の条件で試算してみることが肝心です。

「基本料金」と「調整額」が効いてくる

忘れがちですが、月の請求には使った分の従量料金だけでなく、電気の基本料金や再エネ賦課金、燃料費調整、都市ガスの基本料金や原料費調整がのります[5]。たとえばオール電化の時間帯別料金は夜間が安い代わりに昼間が割高なこともあり、日中の在宅時間が長いとメリットが出にくい場合があります。逆に共働きで夜間に家事が集中する家庭は、夜安い電気とエコキュートの相性が抜群です。

器具の世代交代は“料金”でも効く

エアコンは10年前からでも効率が大幅に改善しています。古い機種の暖房を最新の省エネ機に替えるだけで、体感と同時に電気代が落ちることは珍しくありません[6]。ガス給湯器も「エコジョーズ」へ、電気給湯は「エコキュート」へ。器具の選択は購入費がかかりますが、毎月のランニングが数千円単位で変わるなら、5〜10年で回収できる計算になることもあります。

世帯タイプ別の実例シミュレーション

ここからは、編集部がシンプルな前提を置いて大づかみの比較をしてみます。地域やプランでブレが大きいので、目安としての“桁感”をつかむための材料として読んでください。

ケースA:3〜4人家族・戸建て・入浴毎日

給湯の比率が高く、冬は暖房需要も大きい世帯です。浴槽200Lを毎日、シャワー1人10分×4人を週合計280分と仮定。給湯の熱需要は月200〜250kWh相当になります。ガス的高効率給湯なら実効単価18円/kWhとして3,600〜4,500円程度。エコキュートならCOP3で必要電力が3分の1、夜間単価24円/kWhで計算すると1,600〜2,000円台に収まるイメージ[4]。一方、暖房はリビング中心にエアコン(電気)を主役にすると月の暖房費は抑えやすく、同面積をガス暖房主体にすると合計は上がりやすい傾向です。トータルでは「給湯はエコキュートかガス高効率」「暖房はエアコン」で組み立てると、月あたり数千円規模で有利に働く可能性があります。

調理の差は限定的です。IHは掃除のしやすさや夏の放熱が少ない快適性、ガスは鍋の相性や火力の細かい調整など、ランニングコスト以外の価値で選んでも家計インパクトは大きくはぶれません。

ケースB:単身・1LDK・入浴は週末中心

給湯需要が少ないため、電気の基本料金と夜間料金のメリットが出にくいことがあります。昼間在宅が長く、PC・調理・洗濯乾燥が日中中心なら、時間帯料金のオール電化プランは不利になりうる一方、標準的な電気+必要最低限のガス(コンロ・給湯)という構成がバランスしやすいケースもあります。暖房はやはりエアコンが軸。加湿器やサーキュレーターの併用で体感温度を上げれば、設定温度を1℃下げても快適さを保ちつつ、電気代の上振れを防げます。

ケースC:洗濯物が多い・乾燥機を頻用

乾燥は意外な“費目”。ヒートポンプ式の電気乾燥機は消費電力が少ない一方で時間がかかり、ガス乾燥機は短時間で乾くがガスと電気を併用します。1回あたりのコストは地域と機種で逆転しうるため、まずは取り扱い説明書の消費電力量(またはガス消費量)と、ご自宅の単価で計算してみるののが近道です。乾燥の回数が週に数回から毎日になると、月の合計は数百円から数千円規模に跳ね上がるので、ここを最適化できるかが鍵になります。

家計を動かす“差”はどこから生まれる? 見直しのコツ

まず、検針票(またはアプリ)を1〜3か月分そろえて、使用量と金額、そして契約プランを確認します。次に、自宅の“熱が必要な場所”を書き出して、どの機器がどれくらいの頻度で動いているかを思い出しながら、ざっくりと多い順に並べてみます。多くの家庭では、暖房・給湯・乾燥が上位に来るはずです。そこで、暖房はエアコン中心に最適化できるか、給湯は現状の給湯器の種類と効率がどうか、乾燥は回数や時間帯を調整できるかに目を向けます。調理は最後で構いません。差が小さく、好みや使い勝手の価値が勝ちやすい分野だからです。

時間帯別料金を使える場合、夜にお湯をつくる・洗濯乾燥を回す・食洗機を動かすなど、生活リズムを少しだけ夜寄りに寄せると、月の電気代は着実に落ちます。逆に、在宅勤務や育児で日中の使用が多いなら、昼間単価が高いプランは避け、「標準的な電気料金+ガス高効率給湯」の組み合わせが堅実です。機器の入れ替えを検討するなら、見積時に「年間のランニングコスト見込み」を必ず数字でもらい、5〜10年の総額(購入費+メンテ+ランニング)で比べましょう。高効率機の初期費用が高く見えても、月に2,000円下がるなら5年で12万円。ここまで見通して意思決定すれば、ぶれません。

すぐにできる微調整も侮れません。エアコンは風量自動でフィルター清掃をこまめに。設定温度は冬は20℃前後から、夏は28℃前後から[7]。給湯はシャワーの手元止水や節湯水栓の活用、入浴は追いだき時間を短くするだけで、体感を崩さずに数%の削減が積み上がります。乾燥はタオルだけは浴室乾燥や部屋干しに回し、厚手衣類は時間帯の安い枠で一気に。積み重ねは小さく見えて、ムダを削る順番を押さえれば、“月数千円”の差に育ちます。

より詳しい節約の組み立て方は、NOWHの関連記事「光熱費の見直し術・初級から中級」で、季節ごとのチェックポイントを丁寧に解説しています。エアコンの効率を引き出す掃除のコツは「エアコン掃除で電気代はどれだけ変わる?」に、暮らしの“手間とお金”のバランス感覚は「時間とお金のちょうどいい関係」にもまとめています。家の条件と家族の暮らしかたに照らして、参考にしてみてください。

まとめ—「どっちが安い?」より、「うちには何が合う?」へ

ガスと電気、答えは一つではありません。けれど、方向性ははっきりしています。暖房はエアコンを主役に、給湯はガス高効率かエコキュートで最適化、調理は好みで選んでも大勢に影響は小さい。ここに、生活リズムに合う料金プランを重ねるだけです。思考停止で我慢を増やすより、数字で暮らしを整えるほうが、背筋が伸びます。

まずは直近3か月の検針票を見返し、暖房・給湯・乾燥の順に“熱の使い方”を整える。次に、時間帯料金の適合度と機器の世代を確認。最後に、投資の効果が高いところから入れ替えを計画する。今日できるのは、エアコンのフィルターを掃除し、シャワーの時間を2分短くすることかもしれません。その小さな一歩が、来月の明細書の数字を確かに変えます。さて、あなたの家では、どこから整えてみますか。

参考文献

  1. 総務省統計局. 家計調査 家計収支編. https://www.stat.go.jp/data/kakei/index.html
  2. 一般社団法人エネルギー情報センター. エネルギー価格推移(電気料金の目安等). https://pps-net.org/energyprice
  3. 仙台市ガス局. 家庭用一般料金・従量料金単価等(都市ガスの料金・熱量換算の目安). https://www.gas.city.sendai.jp/family/charge/01/index.php
  4. 環境省 地球温暖化対策. エコキュート(家庭用ヒートポンプ給湯機)の省エネ性(電気温水器比で約1/3の電力消費). https://ondankataisaku.env.go.jp/decokatsu/eco-life/eco-water-heater/
  5. 経済産業省. 2025年4月18日プレスリリース:再生可能エネルギー発電促進賦課金単価等について. https://www.meti.go.jp/press/2025/04/20250418002/20250418002.html
  6. 経済産業省. 2021年2月8日プレスリリース(家庭の省エネ・機器効率に関する情報). https://www.meti.go.jp/press/2021/02/20220208002/20220208002.html
  7. 環境省 COOL CHOICE. 暮らしの中の省エネ・節電(冬20℃・夏28℃の目安). https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。