教育費はいついくら必要?35-45歳向け無理ない準備3ステップ

公立で約1,000万、私立で2,000万超が目安。35-45歳向けに、教育費のピーク時期を逆算して備える無理ない3ステップを具体的に解説。奨学金や教育ローンの賢い使い方も紹介します。

教育費はいついくら必要?35-45歳向け無理ない準備3ステップ

教育費の全体像:いくら必要で、どこに山が来るのか

文部科学省の調査では、幼稚園から大学までの教育費は公立中心で約1,000万円、私立中心ではしばしば2,000万円を超えるとされます[3,4]。さらに日本学生支援機構(JASSO)のデータでは、大学生の約半数が何らかの奨学金を利用しており[5,6]、「貯めるだけでは届かない」現実も浮かび上がります。編集部が複数の統計を照合すると、最も負担が集中するのは高校入学から大学卒業までの約7〜8年で、ここに備えを間に合わせられるかが鍵でした[1]。言い換えると、小中学校期の時間をどう使うかで、その後の選択肢は大きく変わります。教育費は“いつ・いくら・どう貯めるか”の設計次第で、手の届く目標へと形を変えます。

医学や投資の専門用語のような難しさは要りません。必要なのは、数年先までの現金需要の地図です。研究データではありませんが、文部科学省「子どもの学習費調査」や各種統計を踏まえると、教育費のピークは二段構えでやってきます[1]。最初の山は中学〜高校の部活動・塾費・入学関連費が重なる時期、次の山は大学の初年度納付金と下宿費用(自宅外の場合)です。大学授業料は国立で年約53.6万円、入学金を含む初年度は80万円台が目安[3]。私立大は学部により差が大きいものの、初年度で100万〜150万円程度が一般的なレンジです[3,4]。自宅外通学では、日本学生支援機構の調査から住居費・食費・交通費などの生活費が月8〜10万円前後必要になるケースが多く[6]、年間では100万円前後が上乗せされます[6]。つまり大学進学時には、入学直後にまとまった資金、そして毎年の授業料、さらに自宅外なら生活費という三層の支出が連続します。

ここで誤解しがちなのが「総額○○万円」というラベルの呪縛です。確かに総額はインパクトがありますが、家計の意思決定に効くのはキャッシュフロー、つまり年度ごとの支出と収入のタイミングです。総額よりも“年度別の山”を把握することが、現実的な準備の第一歩になります。編集部が家庭のケースを分析すると、同じ総額でも、入学直後の一時金に対応できずにカードローンに頼ってしまう例が少なくありません。逆に、入学金と前期授業料のために毎年春に「使っていい現金」を確保できている家庭は、奨学金や教育ローンの選び方にも余裕が生まれていました。

モデルケースで掴む“現実感”

仮に「小中高は公立、大学は私立文系、自宅通学」を想定します。中学以降、塾代や検定費で年間支出はじわりと増え、高校入学年は制服・教科書・通学定期などで臨時の出費が重なります[1]。大学初年度は入学金と授業料で100万円超が視野に入り[3,4]、受験から入学までの間に複数回の納付期限が走るのが実務上の負担です。このため、中学期から高校入学までに「入学金・初年度納付金に充てる目的資金」を分けて積み立てる家庭ほど、直前の資金繰りに振り回されにくくなります。反対に自宅外の進学を選ぶなら、授業料とは別に生活費として年100万円前後が必要となる想定が現実的です[6].

“いま”から間に合わせる視点

35〜45歳は、上の子が小学校高学年〜高校生、下の子が未就学〜小学生という家庭も多く、収入は伸びても時間と心の余裕が削られがちです。だからこそ、完璧な計画よりも、今ある家計の流れに教育費用の“専用レーン”をつくることを優先してほしいのです。具体的には、給与振込から教育費口座へ自動で資金が流れる仕組みを一度設定し、見直しタイミングを年1回だけ固定する。これだけで、継続のハードルはぐっと下がります。

いくら貯めるかの逆算:年齢別に“必要額”を見える化

貯める額は「最終的な大学初年度の現金」と「毎年の授業料・生活費」を別物として扱うと設計しやすくなります。編集部の推奨は、大学入学時点の“入学一時金+前期授業料”をまず小中高の期間で積み上げる方針を軸に、授業料のランニング分は在学中の収入・給付型奨学金・貸与型奨学金・教育ローンの組み合わせで支える二段構えです[6,2]。これは資産形成の王道である「長期・分散・積立」を教育費に応用した考え方で、入学直後の資金ショックを避けることに直結します。

幼少期〜小学校:時間という最大の味方

時間がある時期は、複利の力を活かした積立が効きます。金利がほぼ付かない普通預金だけに置くより、値動きを許容できるなら親名義の新NISAを使った長期積立で、教育目的の“色分け”をしておくのが実務的です。もちろん元本割れリスクはゼロではありませんが、10年以上の時間を味方につけると、価格変動の凸凹は平均化しやすくなります。学資保険は貯蓄性が高い商品ほど予定利率との兼ね合いでリターンは控えめですが、満期金が入学期に合わせて受け取れる設計は、実務上の安心感につながります。資金の一部を確実に用意する「土台」としては有効です。なお、新しいNISA制度は2024年開始で、対象は原則18歳以上(未成年の新規口座開設は不可)です[7,3].

中学〜高校:入学時の一時金を仕上げる

ここからは、大学初年度に必要な現金の仕上げに入ります。受験期は模試や受験料、交通費、予備校費などの変動費が増えます。そこで固定費のスリム化とボーナス活用を短期集中で行い、教育費口座の残高を「入学金+前期授業料」に到達させることが勝負の分かれ目です。進路の選択肢が見えてくる高2〜高3で、私立か国公立か、自宅通学か自宅外かのシナリオを2つ程度に絞り、各シナリオでの初年度必要額を具体的な数字で書き出すと、残りの月数で割った積立額が現実の家計に落ちてきます。入学直後に必要な現金は“別腹”で、日々の家計には混ぜないことが、資金ショックを避ける実務のコツです。

どう貯めるか:貯蓄・保険・投資・奨学金・教育ローンの使い分け

方法論はシンプルに、目的と時間軸で選び分けます。1〜3年以内に使うお金は価格変動の少ない預金や定期で確保し、3年以上先のお金は親名義の新NISAなどで分散投資して“伸ばす”部分を担ってもらう[7]。学資保険は「満期が合う」「自動で続く」「解約しにくい」という行動面の利点があり、貯め続ける仕組みとして向いています。一方で途中解約の返戻率やインフレ耐性には注意が必要です。投資信託の積立はリターンの不確実性がある反面、インフレ環境でも資産価値を守りやすい特性があり、時間が味方の時期に適合します。iDeCoは原則60歳まで引き出せないため、教育費の“用途自由なお金”としては不向きです[8].

奨学金と教育ローンは“怖い借金”ではなく、タイミングのミスマッチを埋める金融の道具です。JASSOの第一種(無利子)・第二種(有利子)や、自治体・大学独自の給付型は、学力や家計要件があるものの、返還負担の軽い選択肢になり得ます[6]。貸与型は金利と返還期間、在学中の利息発生有無を比較し、卒業後の初任給レンジに沿った返還計画を卒業前に紙で見える化しておくと、借り過ぎを抑制できます。日本政策金融公庫の教育一般貸付は固定金利で年1%台のことが多く、入学直後の一時金に充当する使い方が実務的です[2]。民間のカードローンは即時性はあっても金利が高く、教育費の選択肢としては最後尾に置くのが安全です。

親のNISAで“教育費色分け”をする実務

2024年からの新NISAは未成年の新規口座開設ができない一方で、親名義の口座で教育目的の積立を行い、家計簿上で“教育費ポケット”として管理する方法が現実解です[7,3]。具体的には、つみたて投資枠で世界株式などの低コストな分散型インデックスファンドを毎月一定額積立し、入学3年前からは必要額に合わせて段階的に現金化を進めます。価格変動リスクを受け入れつつも、使う時期が近づくほど安全資産に寄せる、という資産配分の年齢グライドが教育費でも有効に働きます。

家計に落とし込む実行術:仕組み化・見直し・家族の合意形成

方法を知っても動けないのは、忙しい日々の中で意思決定のエネルギーが有限だから。そこで編集部が多くの家庭でうまくいった共通点をまとめると、三つの要素に収れんしました。ひとつは仕組み化です。給与支給日の翌営業日に、教育費専用口座へ自動振替する設定を一度だけ行い、家計アプリ上でも教育費残高を独立して見えるようにしておきます。これで「余ったら貯める」から「先に貯めて残りで暮らす」に切り替わります。次に見直しの定例化です。毎月ではなく年1回、賞与支給後などに進路シナリオを最新化し、必要額と積立額を微調整します。最後が家族の合意形成です。お金の話を月一で、ではなく、進路イベントの前後だけに限定する。議題を「情報共有」「希望」「決定の範囲」に分け、結論が必要なことだけ決めます。話し合いの頻度を減らすほど、家庭内の“教育費疲れ”は軽くなります。

ここで、よくあるつまずきを一つ。教育費を理由に親の老後資金を削り続けると、後で家族全体のリスクになります。教育費と老後資金を同じテーブルで天秤にかけるのではなく、口座も積立仕組みも分け、**“教育費は教育費”“老後は老後”**と見える化するだけで、迷いは減ります。どうしても資金が足りない局面では、進学直後の一時金だけ教育ローンを併用し、在学中の授業料は奨学金で平準化するなど、複数の道具を目的ごとに役割分担させるのが、実務としての最適解になりやすいのです[2,6].

ケーススタディ:Aさんのリブート計画

高2の子どもがいるAさん(42歳、公立中高→私立文系志望、自宅外の可能性あり)。教育費の専用口座はなく、ボーナスでその都度対応してきました。ここからの2年で間に合わせるため、まず受験年と入学年の支出をカレンダー化し、入学金と前期授業料、敷金・礼金・引っ越し費用の現金需要を特定しました。次に給与口座から毎月の自動振替を設定し、加えてボーナスの一定割合を教育費口座へ先取り。親名義の新NISAでは従来の「老後目的」と「教育目的」をファンドで色分けし、教育目的は入学3年前から債券比率を上げる方針に切り替えました[7]。さらにJASSOの給付型奨学金の要件を確認し、貸与型は卒業後の返還シミュレーションを子ども本人と共有[6]。結果として、入学時の一時金は現金でカバーし、授業料は給付型+第一種が通らなければ第二種の少額併用、生活費はアルバイトと仕送りで年100万円枠を上限に、という“現実に回る”設計が描けました[6].

知っておきたい実務リンク

制度はしばしば更新されます。詳細条件や最新情報は、公的機関・大学の公式情報で都度確認してください。家計全体の見直し手順はNOWHの「家計見直し入門」、積立投資の基本は「つみたてNISAの始め方」、奨学金は「奨学金の基礎知識」で、実務の手順とチェックポイントを整理しています。教育費の設計はこの三つを接続する作業だと捉えると、迷いが減ります.

まとめ:完璧より“続く仕組み”。今日、一本のレーンを作る

教育費の正体は、不意打ちではなく予告されたイベントの連続です。統計が示す公立中心で約1,000万円、私立中心で2,000万円超という総額は確かに大きい[3,4]。それでも、年度別の山を可視化し、入学直後の一時金を別腹で用意し、在学中の費用は奨学金や教育ローンで平準化するという設計に切り分ければ、「手が届かない」という感覚はほどけていきます。今日できる最小の一歩は、給与口座から教育費専用口座への自動振替を設定し、目的を“大学初年度の現金”と名付けること。次に、進路のシナリオを2パターンだけ紙に書き、必要額を月数で割る。その先は、年1回の見直しで十分です。完璧な未来予測は要りません。必要なのは、続く仕組みと、家族で共有できる現実的な地図です。あなたの家計に、教育費のための一本のレーンを通してみませんか。

参考文献

  1. 文部科学省 令和5年度子どもの学習費調査 結果概要(公私別負担差の概要含む)https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/006/03121101/003.htm
  2. 日本政策金融公庫 教育一般貸付(国の教育ローン)制度案内・金利等 https://www.jfc.go.jp/n/company/national/loan.html
  3. 七十七銀行 新NISAは子供名義で開設できない!資産運用で教育資金を貯める方法 https://www.77bank.co.jp/financial-column/article64.html
  4. Yahoo!ニュース(MEXT等公的資料を基にした解説)幼稚園〜高校まで15年間の学習費総額に関する記事 https://news.yahoo.co.jp/articles/10dedc10dd80e2fd5ac7620599f4e25869b35d79
  5. Infoseekニュース/LIMO(JASSO資料引用)大学生の約半数が奨学金を受給に関する記事 https://news.infoseek.co.jp/article/toushin1_30402/
  6. 日本学生支援機構(JASSO)学生生活調査(奨学金利用状況・自宅外生活費の傾向)https://www.jasso.go.jp/about/statistics/gakusei_chosa/
  7. 金融庁 新しいNISA(制度概要・対象年齢等)https://www.fsa.go.jp/policy/nisa2/about/index.html
  8. 国民年金基金連合会 iDeCo公式(受給開始年齢・引き出し制限)https://www.ideco-koushiki.jp/guide/receive/”, “removedElements”: [ “冒頭のラベル(【書き出し】)”, “元記事ラベル(【元の記事】)” ], “cleaningNotes”: “本文ラッパーとなる表記を削除し、上付き脚注記号を角括弧形式に統一しました。本文の順序はh2見出しで開始するよう調整し、見出し・段落・強調・リスト・参考文献は保持しました。HTMLタグは該当なしのため変換は行っていません。” }

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