フリマで売ると税金はどうなる?非課税と申告の境界線

不要品は原則非課税でも条件あり。クローゼット整理の一品から継続販売まで、20万円ルール/雑所得と事業所得の見分け方、消費税・インボイス対応を具体例で端的に解説します。

フリマで売ると税金はどうなる?非課税と申告の境界線

“不要品は非課税?”の本当:所得の線引きを物語で理解する

経済産業省の調査では、BtoCの国内EC市場規模は2022年時点で約22.7兆円[1]。フリマアプリやネットショップの普及で、私たちはいつでも「買い手」にも「売り手」にもなれる時代になりました。一方で、売上が立つほど気になるのが税金です。医学や美容のように正解がカタログ化されていないからこそ、ネット販売の税の線引きは曖昧に感じやすい。編集部が各種公的情報を整理したところ、押さえるべき核は、所得区分、申告要否、消費税(インボイス)の三点に集約されます。

「不要品を売っただけなら非課税」と聞くことがありますが、実は条件があります。逆に、継続して仕入れ・製作して売る場合は、所得税も消費税も視野に入ってきます。専門用語をできるだけ日常語に置き換えながら、生活用動産は原則非課税[2]、利益が出る継続的な販売は課税[3]、消費税は売上1,000万円が目安[4]という全体像を、具体例とともに立体的に捉えていきましょう。

クローゼット整理で出てきたコートをフリマアプリで5,000円で売った。このケースは多くが非課税です。もともと購入した価格より安く売る「生活用動産」の売却は、国税庁の解説でも課税しない扱いが示されています[3]。日用品、衣類、家具、子ども用品、一般的な家電など、生活のために使っていたものの多くはここに含まれます。

ただし、例外があります。例えば、1個または1組で30万円を超える貴金属・宝石・書画骨董などは「生活用動産の非課税」の枠外になり、利益が出れば課税対象になる可能性があります[2]。買ったときより高く売れて利益が出たかどうか、そしてその品が“生活用”かどうかが分岐点になるイメージです。

次に、ハンドメイド作品を作って販売する、セールやリサイクル店で仕入れて転売する、といった利益を得る目的の継続的な販売は、所得税の世界では「事業所得」または「雑所得」として扱われます[3]。継続性・規模・営利性の度合いが目安で、規模が小さくても反復していれば課税関係が生まれます。所得は「売上から経費を引いた差額」。経費には、仕入れ代、梱包材、配送料、販売プラットフォーム手数料、決済手数料など、売るために直接かかった費用が含まれます。

雑所得か事業所得か:現場感のある見分け方

線引きは絶対的な売上金額で決まるわけではなく、実態で判断されます。毎月出品し、仕入れや広告、在庫管理を行い、売上が積み上がる運びなら事業性が強くなります。一方、時々の出品で規模が小さく、家事の合間で細々と続けているだけなら雑所得にとどまることもあります。どちらにせよ、収支の記録は必須です。レシートや取引画面のスクリーンショット、プラットフォームの月次明細などを保存し、売上と経費を月ごとにまとめておくと、どちらの区分でも申告に耐える情報になります。

“20万円ルール”の誤解をほどく

会社員に馴染みのある「副収入が20万円以下なら申告不要」という話は、正確には、給与が1か所で年末調整済みで、医療費控除などの適用もなく、ネット販売の所得が雑所得などで年間20万円以下の場合に限り、所得税の確定申告を省略できるという取り扱いです[3]。ここで見落とされがちなのが住民税で、20万円以下でも住民税の申告は必要です[6]。また、複数の給与がある人や、医療費控除・寄附金控除を受ける人は、少額でも確定申告が必要になる場合があります[3]。「自分はどれに当てはまる?」と迷ったら、前年の源泉徴収票を手元に、ネット販売の年間収支と合わせて確認すると道筋が見えます。

会社員の確定申告:いつ、何を、どう計算するか

申告の時期は例年2月中旬から3月中旬。e-Taxを使えば、自宅から手続きが完結します。計算はシンプルで、年間売上 − 経費 = 所得という流れです。例えば、年間の売上が60万円、仕入れや材料費が35万円、プラットフォーム手数料と配送料の合計が8万円だとすると、所得は17万円。給与が1か所で年末調整済み、ほかに申告が必要な事情がなければ所得税の確定申告は省略できる可能性があり、ただし住民税の申告は必要、という判断になります。逆に、所得が20万円を超える、または医療費控除などで確定申告を行う場合は、ネット販売分も含めて申告します。

経費にできるか悩む場面も多いはずです。売るために直接要した費用は基本的に経費になりえます。梱包材や配送用資材、配送料、決済・販売手数料、仕入れに伴う送料、撮影用に購入した簡易背景紙や照明などがイメージしやすいでしょう。一方、家賃や通信費、電気代のようなプライベートと共用の費用は、仕事で使った割合に応じて按分が必要です。スマホ代なら、取引・撮影・顧客対応に使う時間やデータ量の比率を手がかりに、合理的な根拠で割合を決めておくと説明が通ります。私的な支出(家族の衣類、普段使いの雑貨、私用の外食など)は経費になりません。

帳簿は難しく考えすぎないのが続けるコツです。売上はプラットフォームの入金明細ベースで月次合計を記録し、経費はレシートと取引履歴を合わせて日付順に並べます。専用口座や専用クレジットカードを1枚用意すると、私費との混在が減って確認が格段にラクになります。売上と経費を月末に必ず締める「月次ルーティン」を決めておくと、確定申告前の“記憶がない恐怖”から解放されます。困ったときには、編集部が基礎を整理した確定申告の超入門も役立ててください。

住民税と配慮したいリアル

会社に副業が知られたくない場合、住民税の徴収方法を「普通徴収(自分で納付)」にできる自治体もあります。申告書にチェック欄があるケースが多いですが、自治体によって取り扱いが異なるため、提出時に確認すると安心です。また、扶養内で働いている場合は、所得の増加が配偶者の税額や手当の要件に影響する可能性があるので、年内の見込みを早めに試算しておくと、年末に慌てずに済みます。

青色申告という選択肢

規模が育ってきたら、開業届と「青色申告承認申請書」の提出を検討する価値があります。一定の要件を満たし複式簿記で帳簿付けを行うことで、青色申告特別控除や赤字の繰越などのメリットが得られるからです。副業から始めたネット販売が安定し、仕入れや在庫、広告などを計画的に回しているなら、事業としての視点がフィットしやすくなります。

消費税とインボイス制度:売上1,000万円の壁と現実的な判断

消費税は、原則として基準期間(通常は2年前)の課税売上高が**1,000万円を超えると「課税事業者」になり、預かった消費税の納税義務が生じます[4]。基準期間の売上が1,000万円以下なら「免税事業者」として納税は不要ですが、2023年10月に始まったインボイス制度により、取引先が事業者の場合はあなたが適格請求書発行事業者(いわゆるインボイス登録)**かどうかが影響することがあります[5].

ネット販売の相手が主に個人(BtoC)なら、登録の必要性は比較的低い場面が多いでしょう。逆に、ハンドメイド材料の卸先が店舗や法人である、制作物を事業者に納める、といったBtoB取引が中心なら、先方の仕入税額控除の関係で登録を求められる可能性があります[5]。登録すると、価格を据え置いたままでは納税分の負担があなたに残り、手取りが減ることも。税込価格の見直しや、原価・送料・手数料の再設計を合わせて考えると、無理のない着地が探せます。

新規開業から間もない場合や、短期間で売上が急伸した場合は「特定期間」や「課税選択」によって課税・免税が入れ替わることがあります。カレンダーの年ではなく、制度上の判定期間で見ている点がわかりにくさの原因です[4]。年末に「今年は伸びたな」と気づいてからでは選択肢が狭まることもあるため、四半期ごとに売上を累計し、1,000万円ラインから自分がどの位置にいるかを定点観測しておくと安心です。

価格表示とコミュニケーション

プラットフォームによっては税込価格の表記が標準で、送料込みか別かの表示ルールも定められています。消費税の取り扱いを巡る誤解はトラブルの元になりがちなので、プロフィールやショップ説明に価格の内訳や送料の扱い、領収書の発行可否などを簡潔に明記しておくと、購入前の不安を減らせます。BtoB比率が高い場合は、インボイス登録の有無と登録番号を、わかる場所に掲示するのが実務的です。

手数料・送料・在庫――“経費の現場”を整える

ネット販売の利益を守るうえで、実は一番の要は「小さな漏れ」を減らすことです。手数料は数%ずつでも積み重なると大きく、送料はサイズと距離で変動します。プラットフォームの月次明細から、手数料と送料を分けて集計しておくと、どの商品の利益率が高いかが見えてきます。梱包材も、ロールやまとめ買いで単価を下げられることがありますが、保管スペースと在庫回転を合わせて考えるのがコツです。

在庫の持ち方が変わると、税金だけでなくキャッシュフローも変わります。仕入れが先、売上の入金が後という時間差があるため、黒字でも手元資金が細ることは珍しくありません。ひと月単位で仕入れ上限を決め、売れ筋と滞留品の入れ替えをルール化すると、“売れているのにお金がない”状況を避けやすくなります。取引画面のスクリーンショットを注文番号とひも付けて保存する、返金や返品の発生時はメモを残す、海外発送や越境プラットフォームを使う場合は関税や通関手数料の取り扱いを事前に確認する、といった小さな習慣が、年末の「どこいったっけ?」を減らします。

はじめて取り組む人には、ルールが多いように見えるかもしれません。でも、毎月の収支を棚卸ししていくうちに、自分のビジネスの“癖”がつかめてきます。梱包にかける時間、購入者とのやり取りの時間、写真のクオリティによる成約率の違い。数字と感覚がつながると、自然と“ここには投資、ここは削減”の判断が速くなり、税金に対しても構えすぎずに付き合えるようになります。仕組みの基礎を整えた上で、働き方ルールとの相性は副業ルールの基礎、片づけと売り方のコツは手放す・売るの実践も参考になるはずです。

ケーススタディで確かめる“自分ごと化”

例えば、家の不要品を中心に年間売上が15万円、購入時より安く売っているなら所得税も住民税も発生しない可能性が高い一方、住民税の申告は状況に応じて必要です。手づくりアクセサリーの販売で、年間売上が80万円、材料費や送料・手数料が合わせて50万円なら、所得は30万円。給与が1か所で年末調整済みでも、所得税の確定申告が必要になり、住民税も申告対象になります。どちらのケースでも、売上・経費の記録が最初の一歩であることは共通です。

まとめ:数字に怯えないための、今日の一歩

ネット販売と税金の関係は複雑に見えますが、土台はシンプルです。生活用動産の売却は原則非課税、利益を得る目的の継続的な販売は課税、そして消費税は売上1,000万円が目安[4]。20万円ルールの適用範囲と住民税の扱いを理解し[3,6]、毎月の収支記録をルーティン化できれば、確定申告シーズンも慌てません。忘れやすいレシートをスマホで撮影し、その日のうちにフォルダへ入れる。今月の売上と経費を最後の週末に合計して、来月の仕入れ上限を決める。そんな小さな実践が、あなたの手取りと時間を守ります。

きれいごとでは片付かない日常の雑多さを、数字と手順で味方につける。その感覚を一度つかめば、ネット販売はもっとプレイフルで健やかな収入源になります。次の入金日までの間に、あなたは何から整えますか。まずは売上明細のダウンロードと、レシートの撮影から。そこから景色が変わり始めます。

参考文献

  1. 経済産業省. 令和4年度「電子商取引に関する市場調査」の結果を取りまとめました(2023年8月31日). https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/
  2. 国税庁. 譲渡所得の対象となる資産と課税方法(タックスアンサー No.3105). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3105.htm
  3. 国税庁. 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合(タックスアンサー No.1906). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1906.htm
  4. 国税庁. 消費税について(確定申告の手引き 1-11). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/01/1_11.htm
  5. 国税庁. 適格請求書等保存方式(インボイス制度)(タックスアンサー No.6498). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
  6. 平泉町役場. 給与所得以外の所得が20万円以下の場合の住民税の申告は? https://www.town.hiraizumi.iwate.jp/給与所得以外の所得が20万円以下の場合の住民-20329/

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編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。