35-45歳向け 火災保険の選び方:家計を守る5つの必須ポイント

35-45歳向けに、火災・風災・水濡れ・盗難までの補償見直しポイントを解説。地震保険の要否や自己負担、節約テクと簡単チェックリスト付きで、家計リスクを最小化。

35-45歳向け 火災保険の選び方:家計を守る5つの必須ポイント

火災保険の基本と誤解をほどく

損害保険料率算出機構の統計では、2018年の自然災害に伴う保険金支払額は約1.6兆円に達し、住宅の被災は“まさか”ではなく“起こりうる”に変わりました。[1]消防庁の資料でも住宅火災は毎年1万件規模で発生しています。[2]家計も役割も増える35〜45歳にとって、住まいのリスク管理は後回しにしづらいテーマです。とはいえ火災保険は商品名も特約も多く、価格差も大きい。編集部が公的データや商品仕様を横断的に確認して整理した結論は、「住まいと地域の“現実”に合わせて、補償範囲・金額・自己負担のバランスを設計する」こと。保険は“安心の買い物”ですが、払いすぎても足りなくても困ります。ここでは、今日から判断できる基準を、専門用語を日常語に置き換えながら解説します。

火災保険と聞くと火事だけを思い浮かべがちですが、一般的な商品は火災に加えて風災・ひょう災・雪災、さらに上階からの漏水などの水濡れ、泥棒による破損、偶然の破損汚損までを“セット”にして守る設計になっています。重要なのは、地震そのものや地震が原因の火災は火災保険では補償されないという点で、必要なら地震保険(国の制度に基づく別契約)を組み合わせます。[3]ここを押さえるだけでも、想定外の自己負担を減らせます。

もう一つの基礎が、「建物」と「家財」を分けて契約するというルールです。持ち家なら建物(家そのもの)と家財(家具・家電・衣類など)をそれぞれ金額設定します。分譲マンションでも専有部分の内装・設備は建物扱いになるのが通例です。一方、賃貸の方は建物は大家さんの保険で守られるため, 基本は家財の契約に加えて“借家人賠償責任保険”や“個人賠償責任保険”をセットしておくのが経済合理的です。火災保険の支払基準は現在、**再調達価額(同等のものを新たに買い直す費用)**が主流で、古くなった分を差し引く“時価”ではないため、修理費の不足が生じにくくなっています。[4]

保険金額の決め方:不足保険を避ける

建物は“再建に必要な費用”を金額設定の基準にします。土地代は含みません。新築時の見積書やハウスメーカーの目安、保険会社の評価基準を使って、現実的な再建費に近づけます(例:新築費単価法など)。[5]ここで低めに見積もると**比例てん補(設定金額が不足すると、その割合に応じて支払いが削られる方式)**になり、想定より少ない保険金でやり繰りを迫られることがあります.[5]

家財は“家の中の持ち物を買い直すといくらか”を基準にします。家族人数やライフスタイルで幅がありますが、例えば夫婦+子ども2人の世帯なら数百万円規模になることが珍しくありません。冷蔵庫や洗濯機、ソファ、ベッド、パソコン、衣類、本、食器、カーテン、子どもの学用品まで対象になります。いざという時に困らないよう、**スマホで部屋ごとに写真を撮っておく“家財台帳”**が役に立ちます。証明がしやすく、請求のスピードも上がります。

補償範囲の設計:水害と破損をどうするか

どこまで補償を広げるかは、住まいと地域の“地図”から逆算するのが近道です。国や自治体が公開するハザードマップで浸水の想定を確認し、浸水リスクが高い地域では水災(洪水・土砂災害)を外さないのが原則です。[6]一方で高台やマンション高層階で浸水の可能性が低いなら、水災を外す判断が保険料の節約につながることもあります。

また、破損汚損の補償は“日常のしくじり”に効くという現実的な利点があります。子どもが室内で遊んでいてテレビを倒した、家具の移動で床を傷つけた、来客中に家具が破損した、といった“火も水も出ていないけれど困る”事故に備えられます。マンションや賃貸住宅では、上階からの漏水による天井のシミや壁紙の張り替えが必要になるケースも少なくありません。さらに、被害直後の仮住まいや片付け費用などをカバーする臨時費用特約、近隣への見舞金に使える類焼損害見舞金など、生活再建を後押しする特約も検討に値します。[7]

選び方のステップと比較軸

迷子にならないコツは、順番を決めることです。まず住んでいる地域のリスクを把握します。自治体のハザードマップで洪水・土砂災害・高潮の想定を確認し、建物の構造(木造か鉄筋か)、階数、築年数、屋根材など“壊れやすさ”のヒントを拾います。[6]その上で補償範囲を決め、建物・家財それぞれの金額を現実的に設定します。次に検討するのが**免責金額(自己負担)**です。例えば自己負担を5万円に設定すると、ちょっとした修理は自己負担になりますが、保険料は下がります。小さな事故は自分で賄い、大きな事故は保険で守るという線引きが明確になります。

保険期間はかつての10年契約が制度変更で短くなり、いまは1〜5年が主流です。2022年10月の制度改定で、火災保険の最長契約期間は原則5年となりました。[8]同じ補償なら期間が長いほど総額の割引が効く商品が多い一方、家計やライフステージが変わりやすい世代は見直しやすさも大切です。支払い方法は分割・年払の違いでトータルの負担が変わることもあります。

最後に、会社ごとの見積もりを比べます。ここで価格だけを見ると落とし穴があります。同じ“安い”でも、免責の設定や水災の有無、破損の限度額など中身が違うからです。支払い実績や事故対応の評判、オンラインでの請求システム、災害時の臨時拠点の有無など“支払う力”も保険の価値です。疑問点はチャットやコールセンターで確認し、約款の重要事項説明で除外条件をチェックします。経年劣化や施工不良は対象外になるのが一般的で、そこを保険で直すことはできません。

家計に優しい工夫:割引と取捨選択

保険料は設計の工夫で変えられます。免責金額を1万円から5万円に上げる、または小さな事故を繰り返し請求しないという使い方に変えるだけでも負担が軽くなります。水災を外す、限度額を下げる、破損汚損を外すといった取捨選択も保険料に直結しますが、これはハザードマップと生活実感に照らして慎重に判断します。建物の構造や防火性能、耐震等級、オール電化やセキュリティ設備などで割引が適用される商品もあります。勤務先の団体扱いや生協・カード会員経由での加入は手数料が抑えられ、結果的に有利なこともあります。いずれも会社や商品によって違うため、同条件で2〜3社の見積もりを並べて、補償の中身と総額を同時に見るのが賢い選び方です。

“支払う力”をどう見極めるか

保険の価値は“加入時の安心感”ではなく“事故後にどれだけ速く正確に支払われるか”に尽きます。災害時は請求が集中し、調査や見積もりに時間がかかりがちです。サポート体制のページで、24時間受付の有無、オンライン申請の使いやすさ、提携修理会社の手配可否、災害時の特別対応を事前に確かめておくと、いざという時に慌てません。口コミは参考にはなるものの、個別事例に偏りがちなので、複数の情報源で“傾向”を見る姿勢が大切です。

いざという時の請求手順と落とし穴

事故直後は、まず安全確保と二次被害の防止が最優先です。雨漏りならブルーシートで養生し、ガラス破損なら飛散防止の応急処置をします。この応急費用も事故との因果関係が明確なら保険の対象になることがあります.[7]落ち着いたら、被害箇所の写真や動画を撮り、日付のわかるメモを残します。修理業者の見積書や領収書は捨てずに保管し、保険会社へ連絡します。担当者の指示に従い、必要書類を提出すれば、調査ののちに支払いが行われます。

気をつけたいのは、経年劣化や施工不良は保険の対象外であること、そして“保険で無料修理できます”と勧誘する事業者への過度な期待です。国民生活センターも注意喚起しており、過大な見積もりや不必要な工事を抱き合わせる手口が散見されます。[9]契約前に会社の実態を調べ、保険会社にも相談したうえで判断しましょう。重複契約にも注意が必要で、クレジットカード付帯の動産保険や共済と守備範囲が重なると、支払いが按分されることがあります。家計の観点でも、“何で守り、何は自分で負担するか”の線引きを家族で共有しておくのが、請求時のストレスを減らす近道です。

見直しのタイミング:暮らしは変わる

保険は加入した瞬間がゴールではありません。引っ越し、新築・リフォーム、子どもの独立や進学、在宅ワークの増加、大型家電の買い替えなど、暮らしの節目は見直しポイントです。新築時に十分と思えた家財金額が、数年で足りなくなることもあれば、逆に子どもの独立で下げられることもあります。保険料率自体の改定が入る年もあるため、更新の知らせが来たら“自分たちの今”に補償が合っているかを問い直してみてください。スマホの写真フォルダを使った家財の棚卸しは1時間もあればできます。これだけで、請求時の証明力と見直しの精度が一気に上がります。

ケース別:わたしたちの“最適”を探す

戸建ての持ち家なら、屋根材や外壁、周辺の樹木やカーポートなど“風の通り道”を意識して、風災への備えを厚めにする設計が機能します。豪雨リスクがある地域では水災を外さず、臨時費用の上限を少し高めにしておくと避難・仮住まい時の選択肢が増えます。[7]

分譲マンションは、建物の強度や共用部の保険で守られにくい“専有部分の内装・設備”に注意を向けます。上階からの漏水は現実的なリスクです。高層階で水災を外す代わりに、破損汚損や水濡れの補償を丁寧に残す設計が相性のよい選択になりやすいでしょう。

賃貸住まいなら、家財の金額設定と借家人賠償責任が中核です。退去時の原状回復をめぐるトラブルを避けるためにも、火災や水濡れで部屋に損害を与えた際の賠償をカバーしておくと安心です。自転車や子どもの外遊びなど日常の加害リスクが気になる家庭は、個人賠償責任特約を“家族型”で付けるとカバー範囲を広くできます。地震リスクについては、持ち家・賃貸を問わず家財の地震保険を検討する価値があります。[3]

まとめ:現実に寄り添う設計で、安心は軽くなる

選び方の正解は“安い保険”でも“フルカバー”でもなく、住まいと地域、そして家計の現実に合った設計です。ハザードマップで自分の場所を確認し、火災保険の補償範囲と金額、免責を“納得の線”で引く。地震は別枠だと理解し、必要に応じて組み合わせる。請求の流れを事前にイメージし、家財の写真をスマホに残す。今日できるのは、契約内容の確認と、見積もりを2社以上取り寄せて比べることです。

暮らしは変わり続けます。だからこそ保険も更新していく。次の休み、家族でハザードマップを開いてみませんか。“わたしたちの安心”を自分たちでデザインする最初の一歩になります。

参考文献

  1. 一般社団法人 日本損害保険協会. 2018年の自然災害に係る保険金等の支払状況について(2019年3月末現在). https://www.sonpo.or.jp/news/release/2019/1905_02.html
  2. 総務省 消防庁. 令和5年版 消防白書(住宅火災等の状況). https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r5/point/1/68410.html
  3. 一般社団法人 日本損害保険協会 損害保険相談・紛争解決支援センター. 火災保険で地震・津波による損害は補償されますか(Q8). https://www.sonpohogo.or.jp/02.html
  4. 日本損害保険協会 そんぽADR「保険の相談ガイド」Q&A. 火災保険の保険金額は再調達価額で設定するのが一般的ですか(Q55). https://soudanguide.sonpo.or.jp/home/q055.html
  5. 日本損害保険協会 そんぽADR「保険の相談ガイド」Q&A. 再調達価額の評価方法(新築費単価法 ほか). https://soudanguide.sonpo.or.jp/home/q055.html
  6. 国土地理院 防災アプリ・ハザードマップポータルサイト(防災情報提供センター). https://disaportaldata.gsi.go.jp/
  7. 東京海上日動火災保険 よくあるご質問. 住まいの保険の臨時費用・片づけ費用等の支払い例. https://faq.tokiomarine-nichido.co.jp/faq/show/6078
  8. 損保ジャパン よくあるご質問. 火災保険の契約期間が最長5年に制限された理由(2022年10月改定). https://faq.sompo-japan.jp/tokuyaku/faq_detail.html?id=200725&smp=on
  9. 独立行政法人 国民生活センター. 火災保険の保険金の請求サポートサービスに関するトラブルに注意. https://www.kokusen.go.jp/news/

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。