失敗しない遺言書の作り方|35-45歳女性向け 手続きと保管の5ポイント

共働きや再婚、ネット銀行・ポイントの名義まで、35〜45歳女性が押さえるべき遺言書の作り方と保管・手続きの5つのポイントを具体例で解説。今すぐ確認して家族の負担を軽くしましょう。

失敗しない遺言書の作り方|35-45歳女性向け 手続きと保管の5ポイント

今、遺言書を考えるべき理由

遺言書は「資産家のもの」ではなく、誰にでも関係する備えです。共働きで家計を支える、離婚・再婚を経験して家族構成が多様化している、親の介護が視野に入ってきた、名義のままになっているネット銀行やポイント・マイルが増えている。こうした今どきの暮らしの断片のどれもが、遺言の有無で手続きのスムーズさを左右します。相続は悲しみの最中に始まり、口座凍結や名義変更、各種解約といった実務が次々に押し寄せます。事前に「誰に何を、どう渡すか」を言葉にしておくことは、残された人の時間と心の負担を大きく減らす現実的なケア。[1]

相続法の改正で、自筆証書遺言は本文を自書すれば、財産目録はパソコン作成やコピー添付が可能になりました。[4] また、法務局の保管制度を使えば、自筆でも原本を国が保管し、遺言が見つからない・改ざんが疑われるといったリスクを下げられます。[3] さらに公正証書遺言は公証役場が原本を保管するため、発見性と有効性の点で安心感が高い方式です。[5] いずれも「今の生活」に合わせて選べる選択肢が増えています。[2]

遺言書の種類と特徴をやさしく整理

自筆証書遺言:身近で始めやすい基本形

自筆証書遺言は、自分で本文を手書きし、日付と氏名を自書して押印する方式です。[8] 改正により、財産目録は自筆でなくてもよく、預金通帳のコピーや不動産登記事項証明書の写しを添付できます。この場合、目録の各ページに署名と押印を添えるのが要点です。[4] 費用はほぼかからず、思い立った日に着手できる一方で、書式の不備や訂正方法のミスで無効になるリスクがあります。法務局の保管制度を使えば、原本の保管・発見の安心感が増し、家庭裁判所の検認手続きも不要になります。[3]

公正証書遺言:手間を抑え、確実性を高める

公正証書遺言は、公証役場で公証人が内容を確認しながら作成します。原本は公証役場が保管し、遺言者と受遺者(遺贈を受ける人)などは正本・謄本で内容を確認できます。形式不備の心配が少なく、家庭裁判所の検認が不要という実務上の利点があり、病気や高齢で自書が難しい場合にも柔軟に対応できます。[5] 費用は遺産額や条項数に応じて段階的に決まり、目安として数万円から十数万円程度に収まるケースが多い印象です。[6] 証人が2名必要ですが、有資格者に依頼するサービスも普及しています。[7]

秘密証書遺言とエンディングノート:補助的な選択肢

秘密証書遺言は内容を秘密にしたまま、公証役場で提出日付のみを証明してもらう方式です。自筆以外(パソコン)で作成したい場合の選択肢ですが、検認が必要で実務での利用は多くありません。一方、エンディングノートは法的効力がないメモです。医療や葬儀の希望、デジタルサービスのログイン情報、家族へのメッセージを記し、遺言書では書ききれない「想い」の部分を補うのに向いています。

遺言書の作成方法:今日からはじめる実務ステップ

1. 資産の棚卸しと相手を具体化する

最初にやるべきは、どんな資産が、どこに、どれくらいあるかを書き出すことです。預貯金は銀行名や支店名、口座種別まで、証券は銘柄や証券会社、不動産は所在地と地番、保険は契約番号、ネット銀行やポイント・マイル、サブスクのアカウントまで、思いつく限り可視化します。次に「誰に何を渡したいか」を具体化します。長女に自宅を継いでほしい、パートナーに生活資金を遺したい、姪に学費支援を遺贈したい。頭にあるイメージを、紙の上で文章にしてみる段階です。

このとき、法定相続人と遺留分を確認しておくと、後の手戻りが減ります。遺留分は配偶者や子など一定の相続人に保障された取り分で、極端な不公平があると「遺留分侵害額請求」の対象になる可能性があります。[9] 家族構成とおおまかな資産額を俯瞰し、誰にどれだけ渡すのが現実的か、骨子を固めましょう。

2. 方式を選び、文案を整える

自筆証書遺言は、機動力の高さが魅力です。本文は自書、日付と氏名を明記し、押印。[8] 財産目録はパソコンで作成し、関連資料のコピーを添付して各ページに署名押印すれば、読み手にやさしい資料になります。[4] 法務局保管制度を利用するなら、管轄の法務局に事前予約のうえ、本人確認書類とともに提出します。手数料は公表されていますが、最新情報は法務省・法務局のウェブサイトで確認すると確実です。[3]

公正証書遺言を選ぶなら、資産のリストと分配方針、本人確認書類、戸籍・登記事項証明書などの必要書類を準備し、公証人と事前打合せをして文案を詰めます。遺言執行者(遺言の内容を実現する代表者)を指定すると、手続きが格段にスムーズになります。信頼できる家族や専門家を指名し、辞退時の予備(補充者)を記しておくと安心です。

文案の核は、「誰に、何を、どの割合・条件で渡すか」です。不動産の表示は登記事項証明書どおりに、預金は金融機関名・支店名・口座番号で特定し、曖昧さを避けます。生命保険契約の受取人指定の内容も含め、遺言と齟齬がないように見直しましょう。付言事項として、分け方の背景や家族への感謝、教育・寄付の意図など、法律効果を生まない「言葉」を添えると、遺された人が判断に迷いにくくなります。

文章のイメージを掴むために、簡易な例を載せます(あくまで例示です)。

遺言者◯◯◯◯は、次のとおり遺言する。第1条 私は、◯◯市◯◯町◯丁目◯番◯の土地・建物を長女◯◯◯◯に相続させる。第2条 私の有する◯◯銀行◯◯支店普通預金(口座番号◯◯◯◯◯◯)のうち◯◯万円を配偶者◯◯◯◯に遺贈する。第3条 本遺言の遺言執行者として◯◯◯◯を指定する。令和◯年◯月◯日 住所 氏名 印

細部は各家庭で千差万別です。共同名義の財産や住宅ローンの残債、未上場株式、事業性の資産、ペットの飼育費用、デジタル資産の扱いなど、検討事項が増えるほど、公正証書遺言や専門家の知見を組み合わせる価値が高まります。

3. 保管・共有・見直しで「生きている遺言」に

作成後は、どこに原本があるか、誰が知っているかが実務の成否を分けます。自筆なら耐火の保管場所に置き、信頼できる家族に所在を伝えるか、法務局の保管制度を利用します。[3] 公正証書遺言なら、公証役場が原本を保管しますが、正本・謄本の保管先と鍵(パスワード管理を含む)を整理しておくと安心です。[5]

生活は動きます。子どもが生まれた、離婚や再婚をした、親の介護が始まった、資産構成が変わった、移住をした。大きなライフイベントのたびに目を通し、5年をひとつの見直しサイクルにするのも現実的です。最新の意思を明確にするため、古い遺言は「撤回」条項を入れた新しい遺言で上書きします。自筆と公正を組み合わせて、メインは公正証書、軽微な変更は自筆で、といった設計も十分に可能です。

よくある落とし穴と、私たち世代のリアル

「揉めない」ことを最優先に設計する

相続の現場では、金額の大小よりも「情報の非対称」から不信感が生まれがちです。長女だけが通帳の場所を知っていた、次男だけがパスワード管理アプリを知っていた、そんな些細な差が溝を深めます。一覧と意図を見える化することは、金額以上の効果を生みます。付言事項で背景を言葉にし、難しい場面では遺言執行者が公平に進める。淡々と、しかし丁寧に。これが「揉めない」設計の基本です。

35〜45歳にとっての遺言:親と自分、二つの時間軸

この世代の遺言は、自分の将来に向けた準備と、親世代のサポートが同時に進みます。ある40歳の方は、第二子の誕生を機に公正証書遺言を作成し、遺言執行者に姉を指名しました。同時に、離れて暮らす親のネット銀行と証券口座のリスト化を手伝い、法務局保管制度の利用を提案。「自分ごと」と「親ごと」を同じフォーマットで整えると、家族全体の見通しが一気によくなったといいます。※個人のエピソードであり、効果効能を保証するものではありません。

勘違いしやすいポイントを先回りで解消

生命保険契約は受取人指定の内容が優先して扱われるのが通常で、遺言と齟齬がないように見直しましょう。共有名義の不動産は、持分の指定を明確にしないと手続きが滞ります。特定の人に全財産を渡す設計は、遺留分侵害の主張を招くことがあり、結果的に争いの長期化に繋がる場合があります。[9] 相続税は別の法律(税法)で計算され、遺言そのものは税額を直接変える道具ではない点も誤解しやすい論点です。[10] 必要に応じて生前贈与や保険、持ち家の活用など、税やライフプランの視点と合わせて設計しましょう。

まとめ:完璧より、始める。今日の30分が未来を軽くする

遺言書の作成方法は、難解な法令の暗号ではありません。資産を書き出し、「誰に何を渡したいか」を言葉にし、方式を選んで文案に落とし込む。あとは保管と共有、そして生活に合わせた見直しです。完璧を目指して立ち止まるより、まずは叩き台を作る。その紙1枚が、家族の時間と気持ちを守ります。今日はメモアプリを開いて資産とアカウントの棚卸しから始めてみませんか。次の週末は、法務局保管制度や最寄りの公証役場の情報を確認し、思い描く分配の骨子を書いてみる。あなたの「いま」の選択が、いつかの「ありがとう」に変わっていきます。

参考文献

  1. 日本公証人連合会. 令和6年の遺言公正証書の作成件数について. https://www.koshonin.gr.jp/news/nikkoren/yuigon2024.html
  2. 生命保険文化センター(JILI). 遺言書の作成件数や作成状況に関する解説(暮らしと家計). https://www.jili.or.jp/lifeplan/houseeconomy/816.html
  3. 法務省 民事局. 法務局における自筆証書遺言書保管制度(案内ページ). https://www.moj.go.jp/MINJI/01.html
  4. 法務省 民事局. 自筆証書遺言に添付する財産目録(Q&A). https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00240.html
  5. 日本公証人連合会. 公正証書遺言のメリット・概要. https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
  6. 日本公証人連合会. 公正証書遺言の手数料(目的の価額ごとの算定方法). https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
  7. 日本公証人連合会. 公正証書遺言の作成に必要な証人について. https://www.koshonin.gr.jp/notary/ow02
  8. e-Gov法令検索. 民法 第968条(自筆証書遺言). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
  9. e-Gov法令検索. 民法 第1046条ほか(遺留分侵害額請求). https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
  10. 国税庁. タックスアンサー 相続税のしくみ(相続税は税法に基づき計算). https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4108.htm

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。