中古品を売ったら税金はかかる?基礎の整理
はじめに、売上と利益の違いを揃えておきます。アプリで1万円で売れたとしても、それは売上です。税金の判断に関わるのは、そこから購入時の金額(取得費)や販売手数料、送料などを差し引いた後の差額、つまり利益(もうけ)です。ここを取り違えると過度に不安になったり、逆に見落としたりしがちです。
生活用動産(家庭で通常使うもの)を売っても、通常は税金がかかりません[4]。衣類や子どもの用品、日常使いの家具・家電など、暮らしのために使っていた物の売却益は原則として非課税とされるため、多くの「断捨離」は心配無用です。ただし例外があります。貴金属や宝石、美術品などで「1個(または1組)30万円を超えるような高額品」は、生活用動産の非課税から外れることがある[5]。高級腕時計やハイジュエリーの売却で利益が出た場合は、課税対象となる可能性を意識しましょう。
頻度も重要です。年に数回、家の中を整理して出品するレベルであれば、生活用動産の範囲に収まりやすい一方、仕入れて売ることを繰り返し、継続的・反復的に利益を得ているなら「事業」や「雑所得」に該当する可能性が高まります[5]。この場合は利益が課税対象になります。消費税については、個人でも課税事業者に該当する規模(基準期間の課税売上高が1,000万円超など)にならない限り関係しないのが一般的で、日常の不用品売却は消費税の対象外と考えて差し支えありません[6]。
「生活用動産」は原則非課税、でも例外に注意
暮らしに使っていた物は、たとえ購入時より高く売れたとしても、通常は非課税の扱いになります[4]。たとえば限定色の家電や人気ブランドのバッグが値上がりし、購入額を超える価格で売れたとしても、生活用として使用していたなら課税されないのが一般的です。一方で、宝石・貴金属・美術品などで30万円を超える高額品は別物[5]。これらは非課税から外れて課税の可能性が出てきます。迷うときは領収書や保証書の価格、売却時の明細を手元に残し、後から判断できるようにしておくと安全です。
頻繁な販売は「事業」や「雑所得」に
月に何十件も出品し、利益を目的に仕入れも行う場合は、もはや不用品の処分ではありません。売上から仕入原価、販売手数料、送料、梱包資材などの必要経費を差し引いた「利益」に対して税金がかかることになります[5]。給与をもらっている方が副業として行うなら雑所得や事業所得に区分され、規模や実態によって扱いが変わります。帳簿や記録を整えるとともに、年の途中でも利益が出ている実感があるなら、早めに試算しておくと安心です。
ケースで理解:あなたの取引はどれ?
同じ中古品売買でも、背景によって税金の扱いは変わります。実際の暮らしに寄せたケースで考えてみましょう。編集部が相談を受けやすいのは大きく三つのパターンです。
クローゼット整理で洋服を売る場合
季節の変わり目にコートや子ども服を出品して現金化する。こうしたケースは、生活用動産の売却にあたり、原則として税金はかかりません[4]。購入時の価格より安く売れることが多く、利益が出にくいことも背景にあります。注意するとすれば、売上と利益の混同です。例えば売上が年間で20万円を超えても、生活用動産の範囲で利益が出ていなければ確定申告は不要と考えられます。心配なら、いつ・何を・いくらで買い、いくらで売ったかをスマホのメモで控えておくと、後から判断しやすくなります。
高額な腕時計・宝石を売る場合
結婚記念の指輪や、長年使っていた高級腕時計を手放すこともあります。1個(1組)30万円を超える高額品は、生活用動産の非課税から外れる可能性があります[5]。仮に50万円で購入した時計を60万円で売却したなら、差額の10万円が利益に相当します。計算時にはオークションの販売手数料や送料などの費用も差し引ける一方、どの費用まで含められるかは個別の事情で変わり得るため、領収書や売買の記録を保管し、必要に応じて公式情報で確認する姿勢が安心です。価格の根拠が明確であるほど、後からの説明もスムーズになります。
仕入れて転売する場合
フリマや卸で仕入れた品を、相場を見ながら価格をつけて販売する。これは継続的な「稼ぐ活動」です。課税対象となるのは売上ではなく、売上から仕入原価・手数料・送料・梱包費などの必要経費を差し引いた利益です[5]。例えば、仕入6万円、手数料5,000円、送料2,000円の品を9万円で売ったなら、利益は9万円−6万7,000円=2万3,000円となります。給与所得者の場合、こうした副業の所得が一定額を超えると確定申告が必要になる場面が出てきます。早い段階から月次で損益を見える化しておけば、年末に慌てずに済みます。
確定申告が必要になる境目と準備
多くの方が気にするのは「いつ申告が必要になるのか」という境目です。ここは年末の慌てポイントでもあります。暮らしを整えるための中古品売買であっても、一定の条件に当てはまると申告が必要です。
給与所得者の「20万円ルール」と住民税
会社から給与を受け取っている方で、年末調整が済んでいる場合、副業などで生じた所得(売上−経費)の合計が20万円以下なら、所得税の確定申告は不要とされる取り扱いがあります[7]。これが通称「20万円ルール」です。ただし注意したいのは、住民税の扱いは別という点です。所得税では申告不要でも、住民税では申告が必要になる場合があります[7]。会社に副業の情報を知られたくない、という事情があるなら、住民税の申告や普通徴収の選択など、自治体の案内を早めに確認しておくと良いでしょう。なお、給与以外の所得が20万円を超えるなら、所得税の確定申告が必要です。
必要な記録と計算の基本
申告の境目に不安があるときほど、日々の記録が支えになります。購入時のレシートや領収書、受注・発送のスクリーンショット、販売手数料や送料の明細など、「いくらで買い、いくらで売り、どんな費用がかかったか」をひとつの場所に集めるだけで、年末の判断が劇的に楽になります。生活用動産の非課税ラインに収まる取引でも、価格の記録が残っていれば迷いが減ります。複雑に考えすぎず、月末に5分だけメモを更新する“ゆるい家計簿”から始めてみてください。
計算のときには、売上から手数料や送料を引くことを忘れがちです。フリマアプリの明細やメールに残っていることが多いので、月ごとにスクリーンショットを残すだけでも十分役に立ちます。利益が積み上がってきたと感じたら、翌年の納税資金として売上の一部(たとえば1〜2割)を別口座に移しておくと、心理的にも安心です。
安心して売るための実践ヒント
税金は難解に見えますが、日々の工夫で不安は小さくできます。要は「境目を知る」「記録を残す」「早めに確認する」の三点です。暮らしのリズムに合う範囲で続け、必要に応じて公的な情報に立ち戻る。これだけで十分に戦えます。
記録習慣と資金管理で“うっかり”防止
売る前に購入額を思い出し、売った後に手数料と送料をメモする。この二歩だけで、年間の見通しはぐっとクリアになります。生活用動産の非課税に当たる取引が中心でも、高額品を手放す前は価格帯を確認しましょう。30万円を超える可能性があるなら、購入額や保証書の写しを残し、売却先の明細も保管します[5]。副業としての中古品売買を継続するなら、月次で損益を計算し、翌年の納税に備えてプール金を用意しておくと安心感が違います。売上が増えるほど、気持ちの余裕もお金と同じくらい大切になります。
トラブルを避けるための注意点
相場が読みにくい高額品は、査定価格の根拠を複数の業者で比べると納得感が高まります。美術品や宝石などの専門領域は、真贋や状態の評価で価格が大きく動きます。価格が跳ねるときほど、税金の扱いにも気を配りたいところです。プラットフォームの規約変更や発送方法の改定も年々ありますから、手数料率や補償範囲は出品前に最新の案内を確認しましょう。海外サイトを使う場合は、関税や国際送料が想定外に膨らむこともあります。取引を楽しむためにこそ、ひと呼吸おいて条件を読み込み、記録を残す癖をつけておきたいものです。
より詳しい確定申告の流れや必要書類は、編集部のガイドも合わせて参考にしてください。初めての方向けの流れは、はじめての確定申告ガイドで、住民税や副業の基礎理解にははじめての副業アイデアが役立ちます。断捨離を進めたい方はクローゼット整理のコツ、家計施策を組み合わせたい方はふるさと納税の基礎もチェックしてみてください。
まとめ:境目を知れば、もっと自由に手放せる
中古品売買と税金の関係は、売った瞬間に必ず税金がかかるわけでも、完全に関係ないわけでもありません。鍵になるのは、生活用動産は原則非課税という土台[4]、30万円を超える高額品は例外になり得るという注意点[5]、そして継続的に利益を得ているなら雑所得や事業として申告が必要になるという境目です[5]。ここを押さえ、購入額・売却額・手数料や送料の記録を軽やかに続けていけば、迷いは確実に減っていきます。
手放すことは、暮らしを軽くすること。数字に強くなくても大丈夫。今日の一歩として、直近の取引をスマホで記録してみませんか。もし境目で迷ったら、年の途中でも早めに見直し、必要に応じて公的情報にあたる。小さな実践の積み重ねが、安心して「手放す」自由を広げてくれます。
参考文献
- リサイクル通信「2022年のリユース市場規模は約2.9兆円」 https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_8811.php
- SDGs ONLINE「リユース市場は2022年に3兆円規模」 https://sdgsonline.jp/12051/
- 博報堂 生活総研「ネットオークション・フリマアプリの利用」 https://seikatsusoken.jp/teiten/answer/1235.html
- 国税庁「税理士試験 出題のポイント(所得税法)」生活に通常必要な動産の譲渡は非課税 https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishishiken/point2024/03.htm
- freee「転売にかかる税金」生活用動産の非課税と30万円超の取扱い https://www.freee.co.jp/kb/kb-trend/resale-tax
- 国税庁タックスアンサー No.6531「新設法人・個人事業者の消費税の免税」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6531.htm
- 目黒区「給与所得者で、給与以外の所得が20万円以下の場合の申告(住民税)」 https://www.city.meguro.tokyo.jp/zeimu/kusei/faq/juminzei-8.html