幼稚園〜大学の教育費総額を進路別に試算|最新の目安と備え方

私立小6年で約960万円、公立で約193万円――幼稚園〜大学の教育費総額は進路で大きく変わります。最新統計を基に進路別の総額試算と、現実的な備え方をわかりやすく提示します。

幼稚園〜大学の教育費総額を進路別に試算|最新の目安と備え方

いまの相場を掴む:幼稚園〜高校の学習費

文部科学省「子供の学習費調査」では、私立小学校6年間の学習費が約960万円、公立は約193万円という大きな差が示されています。[1] 数字は静かな現実を物語ります。教育費は気づけば毎月の引き落としや学期ごとの集金で積み上がり、振り返ったときには家計の“第二の住宅ローン”のような存在になっていることも。編集部では、最新の公的データを束ね、幼稚園から大学までの教育費の総額を進路別に試算しました。きれいごと抜きに、どこに費用がかかり、何を今から準備できるのか。数字を味方に、次の10年の家計地図を描き直します。

ここでいう学習費は、学校教育費(授業料や学用品等)に加え、塾・習い事などの学校外活動費までを含む“実感に近い”支出を指します。[1] 一方、大学については授業料・入学金などの学費に加え、生活費というもうひとつの大きな山があります。まずは義務教育前から高校までの相場を俯瞰し、次に大学のコスト構造へ。最後に、進路別の総額と備え方を現実的な言葉で整理していきます。

幼稚園から高校までの目安(最新統計ベース)

統計によると、幼稚園から高校までの学習費は、通う学校の設置者(公立・私立)で大きく変わります。医学文献ではなく家計の話ですが、根拠となるのは公的調査です。文部科学省「子供の学習費調査」(直近公表値)を基に年間の平均額を合算すると、幼稚園3年間は公立で約67万円、私立で約158万円。小学校6年間は公立で約193万円、私立で約960万円。中学校3年間は公立で約147万円、私立で約422万円。高等学校3年間は公立で約137万円、私立で約291万円が目安です。これらを単純合計すると、公立ルート(幼・小・中・高すべて公立)は約540万円、幼少中高すべて私立では約1,830万円規模まで膨らみます。数字の幅が大きいのは、授業料だけでなく、給食費、制服・通学用品、部活動費、塾や習い事など、子どもの生活全体に関連する支出が含まれているからです。[1]

編集部の周囲でも実感はデータと重なります。たとえば都内の公立小学校に通わせた家庭では、低学年は学用品や学童の費用が中心ですが、高学年になると塾代が上がり、年間の学校外活動費が目に見えて増えました。一方、私立中高一貫に進んだ家庭では、授業料と施設費が固定的にかかるため、塾は絞っても年間支出は安定して高止まりする傾向がありました。どちらが良い悪いではなく、費用のピークがいつ来るかと、固定費と変動費の配分が異なると理解しておくと、準備の仕方が変わります。

無償化や助成でどこまで軽くなるか

幼児教育・保育の無償化により、3〜5歳の幼稚園・保育所・認定こども園の利用料は上限の範囲で軽減されました。[4] ただし、私立幼稚園の上乗せ分や給食費、行事費などは自己負担が残るため、実際の支払いはゼロではありません。[4] 高等学校については「高等学校等就学支援金」により授業料負担が軽減され、所得に応じて私立の授業料も実質無償化に近づくケースがあります。[5] とはいえ、制服・教材・検定・部活動・交通費などの周辺費用は別枠です。制度で下がるのは“コアの授業料”が中心、残るのは“生活に付随する費用”と覚えておくと見通しが立ちます。

大学の費用は“学費”と“生活費”の二層構造

学費の目安(国公立・私立・文理のちがい)

研究データではありませんが、根拠は公的な学費統計です。国立大学の授業料は標準額で年53万5,800円、[2] 入学金は28万2,000円。[2] 4年間の学費合計は約242万円がひとつの基準です(大学によって若干の差や変更があります)。私立大学は学部で差が大きく、文系は初年度納入金(入学金・授業料・施設費等)が約120万〜150万円、4年間の学費合計で約380万〜450万円が目安。理系は実験設備や実習費がかかるため、初年度で約150万〜180万円、4年間で約500万〜650万円というレンジが一般的とされています。短期大学や医歯薬系は別の水準です。数字は文部科学省の「学生納付金」の集計や各種団体の調査値をもとにした代表値で、個別大学の公表額を必ず確認してください。[3]

また、大学進学時は入学直前の出費が集中します。受験料の複数出願、合格手続き時の納入金、PC・教科書・定期代・新生活の初期費用など、春先にまとまった現金が必要になるため、学費総額とは別に入学準備資金として30万〜50万円程度の現金クッションを意識しておくと安心です。

自宅通学と下宿で分かれる生活コスト

日本学生支援機構(JASSO)の学生生活調査では、自宅外通学の生活費(家賃を含む日常費用)は年間で100万円前後に達する傾向が示されています。[6] 家賃相場や地域差、仕送り・アルバイトの組み合わせでぶれますが、4年間で400万〜600万円のレンジを見込むと、資金計画上の“取りこぼし”が少なくなります。[6] 自宅通学なら住居費は増えませんが、交通費や学内外の活動費が新たに生じます。大学費用は“学費”の山に“生活費”の山が重なる二層構造だと押さえておくことが、家計の備えでは決定的に重要です。

進路別に試算:幼稚園から大学までの総額

ここからは、よくある三つのルートを想定して総額の目安を描きます。数字は前章の代表値を使い、大学は学費を中心に、必要に応じて生活費を加えたレンジを示します。もちろん実際には地域や学校、受験科目数、習い事の内容によって上下します。あくまで**「設計図を描くための物差し」**として使ってください。

まず、公立中心のルートです。幼稚園から高校までを公立とし、大学は国公立・自宅通学と仮定すると、幼小中高の合計約540万円に、大学の学費約242万円が重なり、合計は約780万〜800万円のゾーンに入ります。ここに受験・入学の初期費用を加えても、800万円台で収まる設計が現実的です。もし自宅外通学になれば、生活費として年間100万円前後、4年間で**+400万〜600万円が加算され、合計の総額1,200万〜1,400万円**のレンジに移ります。

次に、幼小中高は公立のまま、大学を私立文系・自宅通学としたケースを考えます。幼小中高の約540万円に、私立文系の学費約380万〜450万円を足すと、合計は約920万〜1,000万円台が見えてきます。地方から都市部の私立大へ進み下宿を選ぶと、ここに生活費**+400万〜600万円が加わり、総額1,300万〜1,600万円**規模です。

三つ目に、中学と高校を私立一貫、大学は私立文系・自宅通学という“よくある首都圏型”を置いてみます。幼稚園は私立約158万円、小学校は公立約193万円、中学・高校は私立で約422万円+約291万円、ここまでの合計は約1,064万円。この時点で公立オールルートとの差は大きく開いています。大学の学費約380万〜450万円を重ねると、総額約1,440万〜1,510万円。もし大学が理系でかつ下宿となれば、学費レンジは約500万〜650万円、生活費**+400万〜600万円が重なり、総額約2,000万円**に近づく計算です。

ここまで読むと息が詰まるかもしれません。でも、見方を変えると処方箋が見えてきます。教育費は突発費ではなく、時間をかけて積み上がる支出です。ピークは小6〜高3の塾・受験期と、大学進学時の初年度。ピークまでの年数と金額感がわかれば、現金の比率、投資の比率、収入イベント(賞与・共働き化・転職)を“いつ・どれだけ”に割り振るかが具体化します。

備えの実践:10年単位で現金と運用を使い分ける

3つの財布をつくる発想で、ピークに耐える

編集部が家計相談の実例を整理すると、うまくいく家庭には共通点がありました。ひとつは児童手当・学資積立の自動化です。児童手当を手を付けずに貯めるだけで、中学入学までに約200万円前後の教育原資ができます。次に、高校までの学習費は現金フローで回すという割り切り。毎年の塾や学校外活動は、家計の月次・年次の中で賄う前提にすると、取り崩しや借入に追われにくくなります。そして、大学資金は時間を味方に運用する。進学まで10年以上ある幼児期に始めれば、つみたてNISAなどの制度も活用しながら、リスクを抑えた積立で初年度納入金や生活立ち上げ費の原資を用意できます。もちろん元本変動のある商品はリスクを理解したうえで、期限の3〜2年前からは段階的に現金化して価格変動リスクを薄めるのが鉄則です。

“入学年の春”に詰まらないための段取り

多くの家庭がつまずくのは、受験から合格手続き、入学準備までの数カ月に支出が集中することです。ここを乗り切るには、受験料・交通宿泊費・入学金・初期費用を合わせて30万〜50万円相当の現金を、あらかじめ“入学準備口座”に分けておくのが効果的でした。冬のボーナスや定期満期を入学前年の12月〜2月に合わせる、教育ローンや奨学金は入学金の納付期限に間に合うスケジュールで申込む、といった時間設計も重要です。なお、奨学金は借入であることを忘れず、卒業後の返済とライフプラン(住宅や老後資金)とのバランスを紙に書き出して見える化すると、安心して選択できます。

最後に、“やらないこと”を決めるという視点も。たとえば、小学校の習い事は“基礎体力+1科目”に絞り、中学受験をしない方針なら高学年の塾代は最小化する。逆に中学受験をするなら、低学年のうちは体験や読書に時間を投資し、高学年の塾費用を見込んで“前倒しの貯蓄”を厚くする。教育は選択の連続です。何かを選ぶことは、何かを選ばないことでもあります。わが家の価値基準を言葉にしておくと、支出はぶれません。

まとめ:数字に怖がらず、物語をつくる

幼稚園から大学までの総額は、ルート次第で800万円前後から2,000万円近くまで広がります。だからこそ、いま見た数字は脅しではなく、地図です。どの道を歩くと、どのタイミングでどれだけのアップダウンがあるのか。見通せば、備えは“小さく・早く・淡々と”で間に合います。今日できることからひとつ、です。児童手当を別口座に移す、学費用のつみたてを月5,000円だけ始める、家族で“わが家の教育の優先順位”を話し合う。小さな一歩は、やがて大きな安心に変わります。あなたの家庭のストーリーは、あなたが決めていい。数字に押しつぶされないために、数字を味方につけましょう。

参考文献

  1. リセマム「子供の学習費調査(最新結果)まとめ」 https://resemom.jp/article/2024/03/29/76141.html
  2. 文部科学省 国立大学の授業料標準額等(審議資料) https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/kokuritu/005/gijiroku/attach/1386503.htm
  3. 文部科学省 私立大学等の授業料等の状況(令和5年度) https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/1412031_00005.htm
  4. こども家庭庁 幼児教育・保育の無償化 https://www.cfa.go.jp/policies/kokoseido/mushouka/
  5. 文部科学省 高等学校等就学支援金制度 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/1342674.htm
  6. リセマム「日本学生支援機構『学生生活調査』の結果まとめ」 https://resemom.jp/article/2024/04/03/76653.html

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。