35-45歳女性のためのつもり貯金で年9万円を貯める簡単家計術

気合不要の実践プラン。行動経済学に基づく「つもり貯金」で、コンビニコーヒー週3回分やタクシー月2回分の“つもり”を別口座に移すだけで、無理なく年約9万円を貯める具体的な方法を紹介。

35-45歳女性のためのつもり貯金で年9万円を貯める簡単家計術

つもり貯金はなぜ効く?「痛み」を小さくする設計

2020年、日本の家計貯蓄率は12%超に跳ね上がりました(内閣府「国民経済計算」)[1]。コロナ禍で支出が減った反動は落ち着き、いまは電気代や食費の値上がりで毎月のやりくりがじわりと重くなる[2,3]。前向きな気持ちだけでは続かないのが現実です。それでも、工夫ひとつでお金の余白は生まれます。編集部が注目したのは、行動経済学を味方につける「つもり貯金」。買った“つもり”、使った“つもり”の瞬間に小さくお金を動かすだけで、生活を削りすぎずに貯金が積み上がる仕組みです。

例えば、380円のコンビニコーヒーを週3回やめたつもりで毎回同額を別口座に移すと、1年で約59,280円。タクシー初乗り730円を月2回徒歩に置き換えれば年間約17,520円。ついで買いのスイーツ260円を週1回控えれば約13,520円。無理をしない範囲でも合計は年9万円前後になります(編集部試算)。金額は控えめでも、積み上がる実感が次の行動を後押しします。

つもり貯金は、行動経済学でいう「メンタル・アカウンティング(心の家計簿)」を利用します[4]。人は大きなお金を一度に動かす痛みには敏感ですが、日々の小さな支出には寛容になりがち。ならば、その小さな支出を「しなかったつもり」にして、同額をすぐに貯金へ移す。心理的な痛みは最小で、成果は目に見える。だから続きます[5]。

さらに、行動科学では「即時性」が重要だとされています。貯金は後でまとめて、ではなく、その場で移す。銀行アプリの振替、キャッシュレス決済のオートチャージ見直し、電子マネーから貯蓄用ウォレットへのスライドなど、行動から成果までの時間差を詰めるほど、達成感が強くなります[5]。やめた、移した、貯まった——この短いサイクルが、明日の自分をまた動かしてくれるのです。

もうひとつのカギは「参照点」。週3回のコーヒーを0にするのではなく、2回にして1回分だけつもり貯金に回す。絶対化せず、現実と折り合いをつけるラインを先に決めておくと、罪悪感に振り回されずに済みます[4]。きれいごとだけで走り切れない日があるからこそ、しなやかなルールが効きます。

今日から始める設計図。トリガーと口座を決める

難しい準備は要りません。最初にやるのは、つもり貯金の「トリガー(合図)」と「受け皿(口座やアプリ)」を決めること。合図は生活のリズムに溶け込んでいるほうが続きます。朝のコンビニに寄らなかった日、雨だけど徒歩で駅まで歩いた日、会議後のタクシーをやめた夜——こうした“合図”が起きた瞬間に、スマホで同額を移す。受け皿は、普段使いの口座とは別にしましょう。ネット銀行のサブ口座、貯蓄用ウォレット、あるいは目的別の振替口座。名前を「旅行」「教育」「推し活」など目的で名づけると、使い道が遠い未来ではなく具体的な楽しみとして手触りを持ちはじめます。

額は小さく、成功体験は大きく。500円玉1枚からでも貯金は貯金です。編集部のテストでは、最初から1,000円以上に設定したケースよりも、まず100〜300円で成功回数を増やしたケースのほうが3カ月継続率が高くなりました。人は「できた回数」が自信を育てるからです。月末にまとめて振り返り、余剰があれば増額し、忙しい月は据え置く。変動制にするほうが、長い目で見ると総額が伸びます。

トリガーは“いつもの自分”の中に置く

平日は電車通勤、週末は家族で買い物、夕方は保育園お迎え、といった固有のリズムに、つもり貯金のスイッチを埋め込みます。例えば平日昼の外食を水曜だけお弁当に変え、その水曜の昼に300円を移す。雨の日に徒歩なら500円を移す。オンライン会議が早く終わった日は自販機ではなくマイボトルで、浮いた150円を移す。予定外の予定に左右されない“自分の生活動線”に結びつけると、忘れにくくなります。

即時にお金を動かす仕組みを整える

行動と振替の間を途切れさせないために、銀行アプリのショートカットをホーム画面の下段に置く、振替テンプレートを作る、金額は予め固定ボタンに登録するなど、ワンタップまで縮めましょう。どうしても即時振替が難しい人は、キャッシュレスの予算口座を週ごとに分け、残高端数を週末に自動で貯蓄口座へ移す「端数スイープ」も有効です。週次でリセットすれば、挫折を翌週に持ち越さずに済みます。

続ける技術。見える化と小さなごほうび

貯金は“見えない成功”になりやすいから、見える化が効きます。アプリの目標達成バーをホーム画面ウィジェットに表示し、移したらその場で色が伸びるように。アナログ派なら、カレンダーに◎をつける、ガラス瓶に500円玉を落とす音を楽しむのもあり。どちらも脳に「できた」を刻み、次の行動を呼び込みます。一定額に到達したら、1割を“ごほうび予算”に回すルールを先に決めておくと、過度な我慢になりません。我慢よりも、選べる自分でいる感覚を貯めましょう。

家族やパートナーの理解も続ける力になります。「つもり貯金で夏の家族旅行の宿代を出す」「年末の帰省はこの貯金で新幹線に」など、具体的なゴールを共有すると、家の中の“応援団”が増えます。個人戦からチーム戦へ切り替わる時期でもある私たちの世代だからこそ、貯金もチーム設計に。家計簿のつけ方に迷うなら、関連記事の家計簿アプリ比較で、続けやすいツールを見つけるのも手です。サブスクの見直しが効きそうなら、サブスク整理術を参考に「解約したつもり」の分を移す仕組みを合わせて導入すると、効果が面で広がります。先取りの自動化に興味が湧いたら、先取り貯蓄の自動化もぜひ。

落とし穴とリカバリー。完璧より、続く設計

つもり貯金の落とし穴は、気力に頼りすぎること、金額を欲張ること、そして使い込み。雨の日にタクシーに乗ることだってあるし、友人との乾杯は必要経費。そんな日は「できなかった」としないのがコツです。水曜の弁当が作れない週があっても、翌週に“取り返さない”。借金のように扱わず、気持ちを軽く保つほうが中長期の総額は伸びます。

使い込み対策には、物理的・心理的な仕切りを作るのが有効です。普段使い口座とは別の銀行に受け皿を用意し、通帳名や口座名を目的で名づける。アプリのアイコンも別色にして、開いた瞬間に「触れたくないお金」と脳が認識するようにします。まとまった額になってきたら、半年〜1年以内に使う目的は普通預金、1年以上先なら定期預金など流動性に合う器へ。生活防衛資金の考え方は、生活防衛資金の作り方で詳しく解説しています。増やす話は別記事に譲りますが、まずは「貯める筋肉」を傷めないこと。インフレや金利環境に気を配りつつ、目的と期限に合った“置き場所”を選べば十分です[3].

最後に、やる気が底をついた日に効く小技を。スマホのメモに「今日のつもり貯金」を一行だけ書く、家族に声で宣言してから振替ボタンを押す、給料日には最初の500円を自分にチップする。どれも小さいけれど、行動のハードルをまたぐ力になります。大事なのは、今日やめられたひとつを逃さず、貯金という未来の自分に手渡すことです。

まとめ——“選べる自分”を毎日少しずつ増やす

つもり貯金は、完璧さより生活の現実に寄り添う貯金法です。買ったつもり・使ったつもりの瞬間に小さくお金を動かし、見える化で達成感を積み上げ、時々のごほうびで心のガス欠を防ぐ。そうして積み上がったお金は、将来の不安を薄めるだけでなく、やりたいことを選べる自由を連れてきます。今日、ひとつでいい。コーヒー、タクシー、ついで買い——どれかひとつの“つもり”が起きた瞬間に100円でも移してみませんか。7日続ければ、習慣の芽が育ちます。もっと整えたくなったら、先取り貯蓄や家計簿アプリも合わせてチェックを。無理なく貯金を増やす道は、あなたの毎日の中にすでにあります。

参考文献

  1. 内閣府「国民経済計算(SNA) 家計貯蓄率データ」
  2. 時事通信「円相場は『まだ高過ぎる』…電気代が13.4%上昇 ほか(2024年7月)」
  3. 時事通信「物価『上昇緩やか』に変更—2023年11月消費者物価(2023年12月)」
  4. CFA Society Japan「メンタル・アカウンティング(心の会計)と行動の難問」
  5. J-STAGE「支払いの痛み(Pain of Paying)と支払方法の影響に関するレビュー」

著者プロフィール

編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。