少額から始めるREIT入門:手間なく家賃収入を目指す3ステップ

少額から始めるREITで、オーナー業の手間をかけずに家賃収入に近い分配金を目指す3ステップを紹介。NISA活用や利回り・リスクの見方、続けやすい始め方まで実務目線で解説。チェックリスト付きで今すぐ検討できます。

少額から始めるREIT入門:手間なく家賃収入を目指す3ステップ

REITとは何か。少額で「家賃収入」に近づく仕組み

REIT(Real Estate Investment Trust)は、投資家から集めた資金でオフィスや住宅、物流施設、商業施設などに分散投資し、賃料や物件の売却益を原資に分配金を支払う仕組みです[4]。日本ではJ-REITとして上場しており、株式と同じように証券取引所で売買できます[4]。物件管理やテナント対応は運用会社が担うため、オーナー業の手間を負わずに不動産の収益に参加できるのが最大の特徴です。

日本銀行の資金循環統計などでは、家計の金融資産のうち現金・預金が5割超を占めることが示されています[1]。一方で、東京証券取引所に上場するJ-REIT(不動産投資信託)の市場規模は十兆円規模、平均的な分配金利回りは概ね3〜4%台で推移してきました[2,3]。数字で見ると、現金だけでは届かない「増やす力」を、日々の暮らしに無理なく組み込む余地があることに気づきます。編集部が主要データを横断して見た結論はシンプルです。きれいごと抜きに言えば、変化の大きい時代に現金だけを握りしめているのは、安心のようでいて機会を手放す行為でもあるということ。そこで検討したいのが、REITでの少額不動産投資です。建物を買わなくても不動産からの収益を受け取れる仕組みを、忙しさの波が日常にあるわたしたち向けに、現実的なステップで解説します。

生活者目線でのメリット:手間が少なく、現金化しやすい

個人で区分マンションを購入すると、空室リスクや修繕、ローン返済など、日々の管理の意思決定が続きます。REITは運用と管理がプロに委ねられ、保有中の手間は口座管理と分配金の確認程度にとどまります。もうひとつの利点は流動性です。上場市場で売買できるため、急な出費が発生しても現金化の選択肢を持てます。わたしたちの生活は季節ごとに支出の山谷があり、教育費や介護など予測しにくいイベントも起こります。スピード感のある意思決定ができる資産は、心理的な安心にもつながります。

データで見るREIT:インカムの厚みと値動きの現実

東証や市場レポートのデータを見ると、J-REIT市場の分配金利回りは時期により上下しながらも3〜4%台を行き来してきました[3]。一方で値動きはゼロではありません。例えば2020年3月の市場混乱期には、東証REIT指数が短期間でおよそ4割下落する場面がありました[2]。株式と同様、価格変動リスクがあること、そして金利や景気、不動産需給の影響を受けやすいことは、数字が物語っています。メリットとリスクを同時に見つめることが、REITと長く付き合う前提になります。

家計の現実とREITの役割:現金偏重からの一歩

日本の家計は国際比較で見ても現金・預金比率が高く、インフレ下では実質的な目減りを招きやすい構造です[1]。もちろん流動性の高い安全資産は必要ですが、将来の支出に備えるなら、現金だけでなく収益を生む資産を一部に組み入れることが合理的です。REITは、不動産という実物資産から生まれるキャッシュフローを、少額・低手間で取り込める手段として有効です。

個別不動産投資と比較すると、REITは分散が初期設定で効きます。1つの物件に集中せず、用途やエリアが分かれた複数の物件に投資されるため、空室や賃料の下振れが一部で起きてもポートフォリオ全体で緩和されます。加えて、売買コストや維持費が明確で、想定外の大規模修繕に突然見舞われる心配は限定的です。対照的に、REITの弱点は市場と連動した価格変動の大きさです。市場心理や金利見通しの変化を受けやすい分、簿価や立地の堅さだけでは短期の値下がりを避けられません。

編集部では、標準的な家計のキャッシュフローにREITを5〜15%程度組み入れた場合の感触を試算しました。あくまで一般論ですが、毎月のつみたてでREITインデックスに連動する投資信託を積み増し、分配金を再投資する運用に切り替えると、同額を現金で寝かせるケースより将来の期待収益が厚くなる一方、評価額の上下は明確に感じる、という二面性が見えてきます。数字の揺れをどこまで許容できるか。その問いに家計と心の両面で答えを持つことが、REITを味方にする近道です。

株式とREIT、役割の違いを知っておく

株式は企業の成長と利益に連動し、配当は利益配分のひとつとして支払われます。REITは賃料という比較的読みやすいインカムに支えられ、制度上分配を重視します[4]。どちらが優れているかではなく、性質が違うと捉えるのが建設的です。教育費や住宅ローンなど支出が可視化されている時期には、成長を狙う株式に全振りするのではなく、インカムを意識したREITを組み合わせることで、家計全体のバランスが取りやすくなります。

関連する基本の整え方は、編集部の解説「NISA超入門:はじめての投資口座」や、「iDeCoでつくる老後資金の土台」、暮らし視点の「毎月のキャッシュマネジメント術」も参考になります。土台を整えたうえで、REITの役割を明確に位置づけましょう。

はじめ方の実務:NISA、コスト、指標の読み方

まずは証券口座を開設し、2024年から恒久化された新NISAの成長投資枠(上限1,200万円)つみたて投資枠(上限600万円)のなかで、REITに投資できる商品を選びます[6]。REIT指数に連動する投資信託ならつみたて投資枠で少額から継続しやすく、上場REITやETFは成長投資枠の対象として、スポットでの購入や配当・分配重視の設計に向きます[6]。購入のタイミングに正解はありませんが、家計のペースに合わせた定期的な積立は、価格変動リスクを時間でならす実務的な方法です。

コストは見えづらいほど効いてきます。投資信託でREITに投資する場合は、目論見書や運用報告書に記載された信託報酬(年率の運用管理費用)を必ず確認しましょう。ETFや個別J-REITを売買する際は、証券会社の取引手数料と、ETFであれば信託報酬、J-REITであれば内部で発生する運用コストを意識しておくとよいでしょう。長く続ける前提では、コストの低さは確かな味方です。

次に、商品選びでよく見る指標を生活者の言葉で整理します。もっとも目にするのは分配金利回りで、現在の価格に対する年間分配金の割合を示します。表面の数字が高いほど惹かれますが、分配金の原資が賃料由来の実力か、売却益や特別要因かで持続性は変わります。決算資料にある稼働率(物件がどれだけ埋まっているか)は、賃料収入の安定性を見るうえで重要です。さらに、借り入れの比率を示す**LTV(総資産に対する有利子負債の割合)が高すぎないかも確認しましょう。最後にNAV倍率(PBRに近い考え方)**は、保有不動産の評価純資産に対して市場価格が割高か割安かを示すものです。単独の指標に頼らず、複数の指標を合わせて「今の分配が続くか」「借入耐性は十分か」「価格にそれが織り込まれているか」を考えるクセを持つと、判断の質が上がります。

購入から保有、そして見直しまでの流れはシンプルです。毎月のつみたて額を家計の余剰から決め、入金と同時にREIT投資信託を自動購入する設定にします。分配金は受け取って生活費に回すより、当面は再投資を基本にすると資産形成の速度が上がります。年に1〜2回は決算資料を確認し、稼働率やLTV、物件の入れ替え状況に目を通しましょう。忙しい時期には価格だけに気を取られがちですが、キャッシュフローの源泉に目を向けることが、感情に流されない最初の防波堤になります。

NISAと税制の現実的な使い分け

新NISAでは生涯1,800万円の非課税保有限度額が設けられ、うち成長投資枠は1,200万円、つみたて投資枠は600万円です[6]。REITの分配金は課税対象ですが、NISA口座であれば配当・分配・売却益が非課税になります[6]。教育費や住宅ローンの繰り上げ返済など資金需要が見えている場合は、つみたて投資枠で流動性の高い投資信託を軸にし、余剰が生まれたタイミングで成長投資枠を使ってETFや個別J-REITを積み上げると、柔軟性と非課税メリットを両立しやすくなります。制度や家計の前提が変わったら、編集部のガイド「NISAでの資産配分を見直すタイミング」も参考にしてください。

リスクと向き合う技術:金利、不動産市況、時間分散

REITの価格は、金利との相性が良くも悪くも大きく、金利上昇局面では将来の分配金の現在価値が下がりやすいほか、借入コスト上昇で分配原資が圧迫されます。また、オフィス空室率や物流需要など不動産市況の変化、為替や海外資金の動きも無視できません。短期の値動きは読めないからこそ、家計のリスク許容度を超えない投資比率に収め、時間分散再投資でブレを減らすのが王道です。

気持ちの面で効くのは、あらかじめ自分の「もしも」を言語化しておくことです。例えば、価格が20%下がったら積立は継続するのか、一部を買い増すのか、あるいは生活防衛のために一旦止めるのか。決めてから始めるだけで、相場のざわめきに翻弄されにくくなります。分配金の使い方も同じです。受け取り消費に回すのか、教育費用の別口座に振り向けるのか、原則再投資にするのか。ルールが迷いを減らし、迷いが過度な売買を減らします。

最後に、REITは万能ではないという前提を忘れないでください。株式や現金、債券といったほかの資産と組み合わせ、家計の目的と時間軸に沿って配分することで、REITは本来の力を発揮します。関連する考え方は「資産配分の基本:目的と時間で決める」に詳しくまとめています。焦らず、しかし手を止めず、生活のリズムに合った速度で前進しましょう。

まとめ:現実に根ざした一歩を、今日の予算で

REITは、不動産という堅さと市場の機動力を併せ持つ、生活者フレンドリーな投資の入り口です。現金の安心を大切にしながら、その一部を分配という現金収入のタネに変えることで、将来の選択肢は着実に増えます。始め方は難しくありません。証券口座を整え、NISAの非課税枠の中で、つみたて可能なREIT投信から小さくスタートする。コストと指標をシンプルに点検し、分配金は当面再投資。年に数回の点検で生活と投資のバランスを微調整していく。たったそれだけで、家計は静かに別の景色を見せ始めます。

今の自分にとって無理のない最初の金額は、いくらでしょうか。1,000円でも、5,000円でも十分です。明日の忙しさは待ってくれません。だからこそ、今日の予算で始められる方法を選ぶことが、わたしたちの強さになります。疑問が残るときは、基礎から復習できる「はじめての投資ガイド」もあわせてどうぞ。小さな始まりを祝福しつつ、次の家計会議で、分配金の使い道について話してみませんか。

参考文献

  1. 内閣府 令和6年版 経済財政白書 第3章 第1節 家計金融資産の構成と特徴(家計の現金・預金比率の国際比較等) https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je24/h03-01.html
  2. JAPAN-REIT.com マーケット動向 2020年3月(月次レポート:東証REIT指数の下落、時価総額の動向) https://ssl.japan-reit.com/report/market/202003
  3. JAPAN-REIT.com マーケット動向 2019年10月(月次レポート:分配金利回り等の指標推移) https://www.japan-reit.com/report/market/201910
  4. JAPAN-REIT.com J-REITとは(制度概要、上場、分配要件の説明) https://www.japan-reit.com/about_J-REIT/
  5. 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 新しいNISAの概要(非課税保有限度額、各枠の上限・対象商品等) https://www.sc.mufg.jp/learn/article/2302002.html

著者プロフィール

編集部

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