不動産投資の税金を3ステップで解説|節税と売却の注意点:初心者向け安心ガイド

賃貸収入の課税、経費・減価償却、購入・保有・売却での税金—所得税45%、住民税10%、売却税率の違いを踏まえ、青色申告や具体的な節税ポイントまで3ステップでわかりやすく解説。まずは要点を確認して節税対策を始めましょう。

不動産投資の税金を3ステップで解説|節税と売却の注意点:初心者向け安心ガイド

不動産投資の税金の全体像:何に課税されるのか

**所得税の最高税率は45%[1]、住民税は一律10%[2]、不動産を売ったときの税率は長期20.315%[2]・短期39.63%[3]という数字は、投資のキャッシュフローを左右する現実です。国税庁の統計でも不動産所得で申告する人は毎年相当数にのぼり、働き方が多様化する今、給与だけに依存しない収入源として不動産に目を向ける人は着実に増えています。だからこそ、税金の仕組みを早めに把握しておくことが、迷いを減らす近道になります。専門用語はできるだけ日常語に置き換え、数字は現場感のある水準で示します。「いつ・何に・どれくらい課税されるか」**という順番で整理すれば、ややこしい印象の不動産投資の税金も、家計簿を整えるようにすっきり見えてきます。

不動産投資で関わる税金は、大きく「運用中の収入への課税」「購入・保有・売却というイベント時の税金」に分けられます。運用中は家賃から経費を引いた利益が所得として合算され、あなたの給与などと合わさって累進税率で課税されます。イベント時は、契約に貼る印紙や登記にかかる税、購入後に毎年届く固定資産税、そして売却益に対する譲渡所得課税が代表的です。なお、住宅の家賃は消費税の対象外です。テナント賃料などとは扱いが異なるため、住宅系の投資では消費税の納税や還付を意識せずに進むケースが多くなります。

まず用語の輪郭をはっきりさせましょう。家賃収入はそのまま課税されるわけではなく、管理会社への手数料や修繕費、火災保険、固定資産税、ローン利息のうち建物に対応する部分、そして建物の減価償却などの**「必要経費」を差し引いた残りが「不動産所得」です。ここでカギになるのが減価償却**で、建物価格を耐用年数に応じて毎年費用化する考え方です。木造はおおむね22年、鉄骨造は厚みなどで差がありますが目安30年台、鉄筋コンクリートは47年という「長さの違い」がキャッシュフローに直結します[4]。中古の建物は耐用年数が短くなるルールがあり、費用化のスピードが速まることもあります。

税率の感覚もつかんでおきたいところです。給与と合算された課税所得の帯によって所得税が決まり、そこに住民税の概ね10%が加わります[2]。たとえば世帯の課税所得が中位の帯にある人なら、所得税20%[1]に住民税10%[2]が乗って**実効約30%**という場面が多く、手残りの見積もりはこの感覚をベースにしておくと、大きなズレが生まれにくくなります。

ケースで見る「課税のされ方」

年間家賃収入が120万円、管理料や保険、固定資産税、日常修繕などの経費が60万円、建物の減価償却が30万円とすると、所得は120−60−30=30万円です。給与と合算され、あなたの税率帯が約30%なら、所得税と住民税あわせておよそ9万円の負担という見積もりになります。キャッシュフローは家賃120万円から現金で出ていく経費60万円を引いた60万円に近くなり、そこから税金9万円が出ていくという流れです。減価償却は現金の流出を伴わない費用なので、キャッシュは残りやすく、ここがローン返済や次の修繕積立にまわせる余力になります。

賃貸運用時の税金と経費:経費になるもの、ならないもの

運用中の税金は、経費の設計で大きく変わります。経費にできる代表例として、管理会社への手数料、共用部の電気代や水道代、日常修繕の費用、火災・地震保険料、賃借人募集の広告料、司法書士や税理士への報酬、固定資産税や都市計画税、建物の減価償却費などが挙がります。ローン関連では、元本の返済は経費になりませんが、利息は経費になり得ます。ただし土地には減価償却がなく、土地取得に対応するローン利息は損益通算の制限を受けるなどの特例があるため、建物と土地を分けて把握する視点が欠かせません。自宅と賃貸部分が混在する場合は按分が必要になり、契約書や見積書の明細を整えておくと、申告時の迷いが減ります。

減価償却は、建物の価格と耐用年数、そして償却方法(居住用賃貸は原則として定額法)で年額が決まります。たとえば鉄筋コンクリート造の区分マンションで建物価格が2,000万円、耐用年数47年の定額法なら、年およそ44万円前後が費用化されるイメージです[4]。中古購入で法定耐用年数をすでに多く消化している場合、新しい耐用年数は短く計算され、費用化のスピードは上がります。逆に、キッチンの総入れ替えや外壁の大規模工事など、価値を長期にわたり高める支出は資本的支出と評価され、いったん資産計上して耐用年数に応じて費用化することがあります。日常修繕との線引きはグレーになりやすいので、見積書の内容や工事前後の写真を残し、説明可能性を高めておくと安心です。

社会保険との関係も気になるところです。一般的に給与所得者が不動産所得を得ても、健康保険や厚生年金の保険料に直結することは多くありません。ただし配偶者の扶養判定や、住民税の通知額が変わることで家計全体のキャッシュフローに波及する可能性はあります。翌年6月に届く住民税の通知で初めて「去年の不動産分」の影響を体感する人も多いので、申告の段階で翌年の資金繰りまでカレンダーに落としておくと、予期せぬ詰まりを避けられます。

シミュレーションで「税引き後の余力」を視覚化する

初年度は仲介手数料や登記費用、火災保険、原状回復などの初期費用が重なりがちで、経費の厚みで所得が小さく抑えられることがあります。2年目以降は定常運転に入り、減価償却とローン利息の下がり方、修繕の山谷で手残りが動きます。3年分くらいの試算を横串で作り、税引き後の手元資金を年ごとに並べてみると、投資の「体感温度」がぐっと具体になります。無理なく続けられる返済計画か、突発修繕に備える積立の厚みは十分か、数字が教えてくれることは想像以上に多いものです。

購入・保有・売却で出会う税金:タイミングで変わる

購入時には、売買契約に貼る印紙税、所有権移転や抵当権設定に伴う登録免許税、そして自治体から後日届く不動産取得税といったイベント系の税金が発生します。新築や事業者から購入する場合は建物価格に消費税が含まれる一方、土地は非課税という扱いです。個人から中古を買うときは、売主が消費税の課税事業者でなければ建物にも消費税はかかりません。ここは契約書の内訳が重要で、土地と建物の区分、建物価格に含まれる消費税額、仲介手数料の課税関係まで、メモを残しておくと後の申告作業が格段にラクになります。

保有中は毎年、固定資産税・都市計画税の納付書が届きます。多くの自治体では年4期に分けた納期が設定され、金融機関の口座振替やペイ系支払いなど選択肢が広がっています。賃貸用の不動産であれば、これらの税金は経費になります。なお、購入当年は売主・買主で日割り精算をしていることが多く、精算書の写しを残さないと申告時に按分を誤りやすいため注意が必要です。

売却時は、譲渡所得の計算が待っています。売却価格から、購入時の取得費(建物は減価償却で簿価が下がっています)と売却時の費用(仲介手数料、測量費など)を差し引いた利益が課税対象です。保有期間が5年を超えると長期譲渡で20.315%[2,5]、5年以下だと短期譲渡で39.63%[3]という税率が目安になります。自宅の売却で使える3,000万円の特別控除は、通常の投資用不動産には適用できません。出口のシナリオを早めに描き、長短のラインを意識しながら売却時期を検討すると、手元に残る金額が変わります。

確定申告と節税のリアル:青色申告の力を正しく使う

不動産所得の申告は、白色か青色を選べます。青色申告にすると、複式簿記で帳簿を整え電子申告や電子帳簿保存の要件を満たすことで最大65万円の青色申告特別控除が受けられます。紙申告や一部の要件を満たさない場合は最大55万円、簡易簿記なら10万円というイメージです。さらに、しっかり帳簿を付けていると**赤字が生じたときに翌年以降に繰り越す仕組み(純損失の繰越控除)**を使える可能性が出てきます。もちろん、投資の目的は意図的な赤字ではなく、将来の安定収益です。控除は「守り」を固める道具として冷静に活用するのが、ゆくゆく自分を助けます。

申告の現場でつまずきやすいのは、家賃の入金ベースと費用の発生ベースのズレ、資本的支出と修繕費の線引き、そして領収書や契約書の保存です。家賃の未収・前受けは発生主義で捉え、敷金の性質も返還予定か償却かで扱いが変わります。工事は見積書の内訳に目を凝らし、耐用年数が延びるような価値向上の支出は資本的支出の可能性を考えます。書類はクラウドストレージと紙の双方で整え、検索できるファイル名ルールを決めるだけでも、年度末のストレスはぐっと和らぎます。

消費税については、住宅家賃が非課税であるため、原則として仕入税額控除や還付を前提にしたスキームは成立しにくいという前提を持っておくと、無用な混乱を避けられます。テナント物件や駐車場など課税取引が絡む場合は扱いが変わるため、用途や契約内容の確認をルーティンにしましょう。

最後に、投資と家計の「全体最適」を忘れないこと。NISAやiDeCoなど金融資産の積立と不動産のキャッシュフローは、同じ家計の中にあります。たとえばボーナス月のローン返済と固定資産税の納期、子どもの学費や旅行の予定をひとつの年次表に並べると、無理のない投資ペースが見えてきます。NOWHの関連ガイドも横断して読むと、家計の俯瞰図が描きやすくなります。たとえば、NISAの基礎、iDeCoのはじめ方、ふるさと納税の最適化、そして副業の税金ガイドなどが、不動産の判断に意外なヒントをくれるはずです。

ミニストーリー:手触りのある一歩

編集部メンバーが都内で区分マンションを一室だけ所有したとき、最初に取り組んだのは経費の「タグ付け」でした。管理アプリに固定資産税、保険、修繕、広告、とタグを作り、通帳の入出金に紐づけていく。3カ月もすると、どの月に資金が詰まりやすいか、どれだけ積立があれば安心かが自分の言葉で説明できるようになりました。税金は怖い相手ではなく、数字で対話できるパートナー。そう思えたとき、投資の判断はぐっと軽くなります。

まとめ:数字に居場所をつくると、迷いが減る

不動産投資の税金は、運用中の所得課税、購入・保有・売却のイベント課税、そして申告の作法がつながると一気に理解が進みます。税率の目安を掴み、経費と減価償却の設計を整え、青色申告の65万円控除など守りの選択肢を確保する。たったこれだけで、投資の「見えない不安」はかなり解像度が上がります。

今日できる一歩は、物件の「建物価格」と「耐用年数」を確認し、来年の固定資産税とローン返済予定をカレンダーに落とすこと。そのうえで、3年分の税引き後キャッシュフローのラフ計画を作ってみてください。数字に居場所をつくるほど、判断はやさしくなります。

参考文献

  1. JETRO. Taxation in Japan: Individual income tax rates. https://www.jetro.go.jp/en/invest/setting_up/section3/page7.html?_previewDate_=null&_tmpCssPreview_=0%2F%2F.html%2F1000%2F%2Fevents%2F&revision=0&viewForce=1#:~:text=Over%2018%2C000%2C000%20yen%20%20,%7C%2045
  2. Tokyo Portfolio. Capital gains tax in Japan: calculations for real estate sellers. https://tokyoportfolio.com/articles/capital-gains-tax-in-japan-calculations-for-real-estate-sellers/#:~:text=rate%20is%2039.63,315
  3. liens-tax.jp. 不動産譲渡所得の税率(短期・長期)と計算方法. https://liens-tax.jp/2017/03/09/capital-gains/#:~:text=%E7%9F%AD%E6%9C%9F%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E6%89%80%E5%BE%97%E2%86%9239
  4. 投資家けいちゃん. 減価償却の超かんたん入門(耐用年数の目安:木造22年・RC47年など). https://toushika-keichan.com/2020/11/02/easy-depreciation/#:~:text=%E6%9C%A8%E9%80%A0%E3%81%AF22%E5%B9%B4%E3%80%81RC%E3%81%AF47%E5%B9%B4%E3%83%BB%E3%83%BB%E3%83%BB%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%8F%E3%82%89%E3%81%84%E3%81%AA%E3%82%89%E3%81%AB%E3%80%81%E4%B8%8D%E5%8B%95%E7%94%A3%E6%8A%95%E8%B3%87%E3%82%92%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%A4%A7%E5%8D%8A%E3%81%8C%E3%81%94%E5%AD%98%E3%81%98%E3%81%A0%E3%81%A8%E6%80%9D%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
  5. 楽待 不動産投資新聞. 不動産売却時の税率(長期20.315%など)の基礎. https://www.rakumachi.jp/news/practical/110001#:~:text=%E9%95%B7%E6%9C%9F%E8%AD%B2%E6%B8%A1%E6%89%80%E5%BE%97%E3%81%AB%E5%AF%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E7%A8%8E%E7%8E%87%E3%81%8C20

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