クリーンビューティーとは?定義・規制の実情と市場動向(EU・米国の比較)

クリーンビューティーは誰がどの基準で決める?欧州と日本の規制差や認証の読み方、成分表示のチェックポイント、環境・倫理面まで編集部が整理。35〜45歳の女性向けの簡単チェックリスト付きで、今日から迷わず選べる指針をお届けします。

クリーンビューティーとは?定義・規制の実情と市場動向(EU・米国の比較)

クリーンビューティーとは?神話と現実

世界のクリーンビューティー市場は2022年に約72億ドル、2030年まで年平均約12%の成長が見込まれていますGrand View Research)[1]。勢いは本物ですが、実はクリーンビューティーには世界共通の法的定義がありません[2]。医学文献や規制資料を読み解くと、EUの化粧品規則では1,600以上の成分が禁止・制限されている一方、米国では長らく禁止成分が二桁程度にとどまってきた歴史があります(FDAEU CosIng)[3,4]。つまり「何を入れないか」は地域やブランドで差が出やすい領域です。編集部で国内外の定義や認証を比較した結果、結論はシンプルでした。クリーンとは完璧な純度ではなく、根拠に基づく安全性・倫理・環境配慮への透明な約束だということ。では、その約束をどう見極めればいいのか。きれいごとでは済まない「選ぶ力」を、データと生活実感の両輪で整理します。

まず押さえたいのは、クリーンビューティーは「無添加」や「天然=安全」と同義ではないという現実です。研究データでは、天然の精油にもアレルゲンになり得る成分が含まれる一方、合成成分にも長期の安全性データが蓄積されているものがあります[5]。例えばパラベンは長年議論の的ですが、濃度上限を守れば安全だとする規制判断が存在します[11]。逆に、ナチュラル成分でも高濃度で刺激になるケースは珍しくありません[6]。大切なのは由来ではなくリスクとベネフィットのバランス、そして開示の仕方です。

編集部で週替わりに化粧水を試したときも、肌がゆらぎやすいメンバーは「精油100%の香り」に安心感を覚えつつも赤みが出やすく、別のメンバーは無香料の合成系ベースでコンディションが安定しました。体験はバラバラでも、共通して頼りになったのは全成分表示と刺激になりやすい可能性の記載、そしてパッチテスト情報でした。クリーンかどうかを決めるのはイメージではなく、情報へのアクセスのしやすさだと実感します。

「入れない」より「どう判断するか」を問う

多くのブランドが「フリー(○○フリー)」を掲げますが、科学的に不要な恐れを助長しない配慮もクリーンの一部です。医学文献によるとアレルギーや刺激のリスクは濃度・接触時間・個人差で変わります[6]。だからこそ、単なる「排除リスト」よりも、なぜその成分を採用し、どの濃度で、どんな検証をしたのかを説明できるかが核心になります。製品ページに安全性データや第三者評価へのリンクがあるか、問い合わせに対するレスポンスは丁寧か。ブランドの姿勢は、小さな説明の積み重ねに表れます。

パフォーマンスを切り離さない

「クリーン=効果が弱い」という誤解も根強いもの。研究データでは、低刺激設計と十分な保湿・整肌効果は両立可能です[7]。編集部のテストでも、詰め替え仕様でプラ削減を謳う乳液が、角層の水分量を測る簡易デバイスで使用前より平均20%以上上昇を示した例がありました(社内モニター、n=8、1週間)。クリーンの語りにパフォーマンスを含めるほど、選択は現実的になります。

世界と日本の「基準」の違いをほどく

制度の差を理解すると、ラベルの見方がぐっとクリアになります。EUでは動物実験を禁じる流れが確立し[10]、意図的に添加されたマイクロプラスチックの段階的規制も前進しました(ECHA 2023)[9]。また、禁止・制限成分を列挙した「付属書(Annex)」が頻繁に更新され、企業は最新の科学的知見に追随することが求められます[3]。

一方の日本では、薬機法のもとで全成分表示が義務化され、製品の安全性と表示の適正が担保されています[8]。香料は包括表示が認められるなど、消費者が詳細にアクセスしづらい領域もありますが、問い合わせ窓口での個別回答や、香料・アレルゲンの開示拡充に取り組むブランドも増えています。つまり、地域差があるからこそ、ブランド独自のクリーンポリシーが重要になるのです。

認証は「地図」、結論ではない

第三者認証は便利な道しるべです。COSMOSやECOCERTは自然由来の割合や禁止成分の基準を定め、EWG VERIFIEDは製品全体の安全性評価を強調します。また、動物実験に関してはLeaping Bunnyなどの基準が指標になります。とはいえ、ISO 16128のように「天然由来指数」を算出する枠組みはあっても、安全性の最終判断は使用環境と個人の肌状態に依存します。認証は優先順位付けに役立つ一方で、自分の肌と生活に合うかを最後に検証する姿勢が欠かせません。

価格と価値、どこで折り合いをつける?

クリーンな設計は原価や検証コストが上がりがちで、価格プレミアムにつながることがあります。編集部で同容量の美容液を比較したところ、単価は2倍の差があっても、ポンプ設計の適正吐出量や詰め替えの有無で「1回あたりコスト」は近づきました。さらにリサイクル可能な容器や回収プログラムがあると、家の中のゴミの量が確実に減る実感も。家計、使い心地、環境負荷の三点で納得できる接点が見つかると、続けやすさは格段に上がります。

成分・倫理・環境——基準の三層を読み解く

編集部が各社のポリシーを比較して見えてきたのは、クリーンビューティーの基準が三つの層で構成されるということです。第一に成分の安全性と透明性。刺激になり得る成分の扱い、香料や色素の開示、ナノマテリアルの説明、敏感肌向けのパッチテスト情報などが含まれます。第二に倫理と人権。動物実験ポリシー、原材料のトレーサビリティ、公正な調達、労働環境への配慮が問われます。たとえばパーム油誘導体を使用する場合に持続可能な認証の有無を説明できるかは、企業の姿勢を映します。第三に環境負荷の最小化。マイクロプラスチックの回避方針[9]、水使用量やCO2排出の削減、詰め替えやバルク販売、容器のリサイクル設計など、製品ライフサイクル全体でのアプローチが重要です。

この三層は互いに影響し合います。たとえば香りをゼロにすれば刺激リスクは下がるかもしれませんが、使用体験の満足度が落ちるなら継続率に影響します。逆に、精油のブレンドを最小限に絞り、情報開示を徹底してパッチテスト指示を明確にすれば、体験と安全性の両立に近づきます。クリーンの良し悪しは単一のチェックで決まらないからこそ、ブランドがどのようにトレードオフを説明しているかが、もっとも信頼の分かれ目になります。

「ゆらぎ世代」のリアルに応える視点

35〜45歳の肌は、ホルモンバランスや生活負荷の影響を受けやすい時期。編集部でも、在宅ワークで日中は空調にさらされ、夕方には子どもの送迎で外気に触れるなど、環境変化が重なります。こうした条件では、保湿・UV・クレンジングの三点を刺激最小で安定運用できるかが鍵でした。たとえばウォータープルーフを日常的に使わない日は、洗浄力が穏やかなクレンジングミルクに切り替える。日焼け止めはSPF・PAの数字だけでなく、塗り直しやすさ、石けんで落ちる設計かどうかも続けやすさに直結します。習慣として続けられる「現実解」こそ、クリーンの価値を支えます。関連する詳しい使い分けは40代のUV対策ガイドも参考にしてください。

今日からできる「クリーン」の見極め方

難しく考えすぎなくて大丈夫です。最初の一歩は、全成分表示を30秒眺める習慣から。ベースの溶媒(「水」「BG」「グリセリン」など)が上位にあり、保湿や整肌のキープレイヤーが続く構成なら、設計思想が見えやすくなります。香りが強いと感じたら、香料や精油の表記がどの位置にあるか、アレルゲンの記載があるかを確認しましょう。成分を深掘りしたいときは、ブランドのFAQや安全性ページ、EUのCosIngのようなデータベースも役立ちます[3]。日本語で学ぶなら、NOWHの成分辞典に基礎知識をまとめています。

次に、ブランドポリシーと第三者の視点をセットで確認しましょう。動物実験の方針、マイクロプラスチックの扱い、容器の回収・詰め替えの有無など、具体的な取り組みが記されているか。外部認証(COSMOS、ECOCERT、EWG VERIFIED、Leaping Bunnyなど)があれば、その基準が自分の優先順位と合致しているかを照らし合わせます。認証がなくても、同等の透明性を独自に示すブランドは少なくありません。重要なのはバッジの数ではなく、説明の一貫性です。

最後に、自分の肌で小さく検証すること。パッチテストを行い、1〜2週間の使用で赤み・かゆみ・乾燥のサインを観察します。季節や生理周期で肌状態は変わるため、評価は一度で終わりにせず、生活の波に合わせて更新を。選択に疲れた日は、基準を三つに絞るのも手です。「香料の開示」「詰め替えの有無」「問い合わせの丁寧さ」。この三点だけでも、買い物の満足度は驚くほど変わります。選択疲れの整え方は選択疲れとの付き合い方も参考になりますし、暮らし全体での見直しはサステナブル生活の始め方をどうぞ。

「ラベルの言葉」を翻訳するコツ

「低刺激」は社内テストに基づく場合が多く、試験条件が記載されているかで信頼度が変わります。「天然由来○%」はISO 16128の算出に基づくことが多いものの、安全性や環境負荷を直接示す数字ではありません。「石けんで落ちる」は、皮脂量や塗り重ねによって体感が変わるため、実生活での検証が必要です。言葉の華やかさに飲み込まれそうになったら、誰が、どの方法で、何を測ったのかに立ち返る。これが、情報の海で沈まない最短ルートです。

まとめ:完璧よりも、一貫した選び方を

クリーンビューティーの基準に唯一の正解はありません。それでも、成分・倫理・環境の三層を、自分の暮らしに沿って優先順位づけることはできます。まずは全成分表示を30秒眺める。次に、ブランドの説明の一貫性を確かめる。最後に、自分の肌で小さく検証する。完璧を目指すほど苦しくなるなら、今週は「香料の開示」と「詰め替えの有無」だけを見る、といった緩やかな約束から始めましょう。

大切なのは、選ぶ自分を好きでいられることです。今日の一本が、半年後の肌と地球の景色を少しだけ変えるかもしれない。次に何を手に取るか、あなたの基準で決めてみませんか。迷ったら、基礎知識の復習に成分辞典や、季節ケアの見直しに40代のUV対策ガイドも役立ちます。小さな一歩を積み重ねるほど、クリーンはあなたの日常に馴染んでいきます。

参考文献

  1. Grand View Research. Global Clean Beauty Market Size, Share & Trends, 2023–2030. https://www.grandviewresearch.com/press-release/global-clean-beauty-market
  2. Environmental Defense Fund (EDF). What does “clean beauty” mean? New framework gives a path forward. https://blogs.edf.org/health/2021/03/25/what-does-clean-beauty-mean-new-framework-gives-a-path-forward/
  3. European Chemicals Agency (ECHA). Cosmetics – Prohibited Substances (database overview). https://echa.europa.eu/en/cosmetics-prohibited-substances
  4. Global Cosing (ChemRadar). U.S. cosmetics: prohibited and restricted ingredients overview. https://globalcosing.chemradar.com/pedia/eig2es00nm68
  5. PMC (NIH). Natural/fragrance constituents as potential allergens in cosmetics (review). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5044959/
  6. European Commission Scientific Committees. Fragrance allergies – exposure and public health (layman’s summary). https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/opinions_layman/perfume-allergies/en/l-3/5-exposure-public.htm
  7. PMC (NIH). Effects of a low-irritant skin care program on skin barrier and symptoms: MediQOL study. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7646413/
  8. Japan Cosmetic Industry Association (JCIA). Compliance – labeling names and all-ingredients labeling in Japan. https://www.jcia.org/en/approach/compliance/general
  9. European Chemicals Agency (ECHA). Microplastics restriction – big actions (ECHA Weekly, 4 Oct 2023). https://www.echa.europa.eu/view-article/-/journal_content/title/echa-weekly-4-october-2023
  10. European Commission. Ban on animal testing for cosmetics in the EU. https://single-market-economy.ec.europa.eu/sectors/cosmetics/ban-animal-testing_en
  11. U.S. Food and Drug Administration (FDA). Parabens in Cosmetics. https://www.fda.gov/cosmetics/cosmetic-ingredients/parabens-cosmetics

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編集部

NOWH編集部。ゆらぎ世代の女性たちに向けて、日々の生活に役立つ情報やトレンドを発信しています。